働くということに真剣に向き合えるようになったのは、大学4年生の2月、卒業を1か月後に控えたときだった。

そこから2年前、4年生になるタイミングで一度休学をした。その時の理由は、
「就職活動に真剣に向き合うために、長期インターンに参加したい」
だがそれは口実だったのかもしれない。本当の理由は、
「就職に向き合う勇気がまだない。もっと猶予が欲しい」
まさにモラトリアム期間が、もっと欲しかったのだ。

友人たちが就職先を決める中、私はえーと、何してたんだっけ?

貴重な22歳の1年間を、私は無駄にした。
もちろん色んなことがあった。実際長期インターンには参加したし、3年付き合った彼と同棲を始めた。
同じ時間に友人たちは就活を行い、コロナ前の超売り手市場で進路を決めていった。バイトに励み卒業旅行の資金を貯め、そうだ忘れていたと運転免許をとったり卒業論文を書いたりしていた。
私は、この1年間の記憶があまりない。
長期インターンごときで何かをした気がしていたが、あそこで私は何も頭を働かせていなかった。下半期にいたっては、ちょこちょこと説明会に参加することで就活を始めた気になって、平日は16時に起床することもざらだった。

当然、考えられない頭と動きの鈍い身体に私は退化し、馬鹿に成り下がっていた。
そんな状態で就活本番に突入したのである。何が「就職活動に真剣に向き合うための休学」だ。自分でも笑えてくる。
そしてそこに、未知のウイルスによる突然の恐慌がやってきた。
うまくいかないのは、もう目に見えているだろう。

しまった。約2年の就活を終えた後で生まれてしまった「働く」ことへの悩み

1年間という最高の猶予があったにも関わらず、私は考えなかった。何がしたいのか、どうなりたいのか。
就職活動という波にのまれないように1年間過ごしたのに、コロナという社会全体の焦燥感も相まって、ずるずるに飲み込まれてしまった。
幸い適当な文章構成力とほどほどの学力があったため、就活という様式美を終わらせることはできた。
しかし、正論の展開を行うビジネス色の強い私の就職予定先は、私の心をごりごりと削ってくる。心がきゅっとつぶれていく。
そんなことに気付きながら、私はどう動いていいのか分からず、卒業論文に没頭することで現実から逃げた。
悪い会社ではないのだ。自分が順応しにくいだけで。
進路への深い悩みは、休学期間以前の活動を含めると、約2年の就活を終えた後に生まれてしまった。

遅い。

今更、いや、でも学生のうちに気付けたからヨシ!ってことにさせて

でも気付いてしまった。気付けてしまった。
やっと働くということが、生活レベルにおりてきた。将来の夢じゃない、次の現実を決めていたんだということに気がついた。さぁやっとだ、働く理由を考えるフェーズにやっと来れた。
大学4年生の2月(休学を含めれば大学5年目)。遅すぎる。でも、学生のうちに気付けたじゃないか。まぁ正直そう開き直らないとやってられないぐらいには打ちのめされている。あぁ私は時間をドブに捨てたのか、と。

私の中には二つの相容れない考えが同居している。
社会人の初期段階からゴリゴリと働き、いち早くほどほどのポジションに行きたい。
それなりの大学を卒業するんだし、しっかり稼がなきゃ。給料の良い会社に入るほうがかっこいいじゃない。
そうすると、20代前半という若さと大人の中間あたりの楽しい時期の、プライベートをほとんど犠牲にすることになる。
私の心のキャパシティだと、オンオフをすっかり切り替えて楽しむことはなかなか難しいだろう。

もう片方は、今を存分に楽しみたい。新たに始めてしまった彼との楽しい生活をきちんと保ちながら、心穏やかに働きたい。やりがいは求めたいけど、すでに働いている彼との時間が今以上になくなるなんて耐えられない。
夕方には一息ついて、きちんと晩ご飯を作りたい。
そうすると、楽しそうだなと思う仕事には到達できないだろうし、ガッポリ稼ぐというのも難しいだろう。だって穏やかなので…

両立できないか?
ほどほどにハードな道、存在するんじゃないか。
探そう。何が自分にとってハードか分からないから。
キャリアアップ?転職に不利?知るか。
社会の歯車と好きに生きることを両立してやる。
きっとそのためには、内容に対する情熱が必要なのだと思う。

本当に私に向いている職種は、就職先とは100度くらい方向が違うみたい

ここまで考えを羅列して(整理はされていない)、これから始めようとしている仕事を見つめてみた。
シンプルに興味が薄い。楽しくなさそう!
こりゃあだめだ。いい環境だと思っていたけれど、私実はこの仕事全然興味ない…。
どうやら私は、全然ビジネスマンになりたくないらしい。
こんなひねくれものだけど、根は小学生ぐらいから変わらない世間知らずでまだまだ夢見がち。感受性高め。
いわゆる就活をしていた時代、私はインターンの経験からひねり出した志望業界を見ていた。自己分析もしたし、それなりに面接にも通用した。
でも本当に向いていそうなことが少しずつ見えてきた。
やっと今、見えてきた。
今から私が踏み入れようとしている世界とは、少なく見積もって100度ぐらいは方向が違う。

幸か不幸か、予定していた卒業旅行には行けそうにない。一人で中国を縦断するつもりだったんだけど…。じゃあ、残り少ない学生の期間で、武器を拾い集めよう。

就職前から、転職活動をはじめた。
残念ながら私があこがれるクリエイティブな才能はあまりないことはずっと前からわかっているので、いかに自分の感性を表現するかを考えていこうと思う。

不誠実であることは重々分かっているが、自分の人生の責任は自分にしかとれない。別に気に入ってもない会社に入ること自体どうなんだと言われるかもしれないけど、私は今ある環境を、周囲を、せっかくだから利用させてもらう。
そりゃもちろん出来るだけ誠実に。誠実な顔でね。
私は、私の働きたいを求めて、働く。