その日、私は人生で初めて死にたいと思った。
運良くなかなかハッピーな人生を過ごしてきて(いや脳内お花畑だっただけなのかもしれない)、死にたいと思ったことはなかった。
会った瞬間一目惚れの彼と仲良くなり、きっとうまく行くと思っていた
彼に出会ったのは高校三年生の秋。
塾が同じで仲良しだった男子2人、女子2人の4人で、文化祭を回る約束をしていた。
そのとき、この男友達がもう1人入れてもいいかと、連れてきたのが彼だった。
私は文系クラス、彼は理系クラス。一度も同じクラスになったことはなく、存在も知らなかったけど、会った瞬間一目惚れした。優しそうな、信頼できそうな雰囲気が良かった。
文化祭ならでは、お化け屋敷も一緒に入った。
会ってすぐ、初めましてで私が彼に落ちたことに気づいた男友達は、私と彼をペアにしてくれた。
こわい、なんて言って。
無理、なんて言って。
気づいたら手を繋いで歩いていた。
大学も、学部は違えど同じだった。
大学を決めるのに相談したことはなく、全くの偶然だったけど。
家も近く、何度もカラオケに行ったり、カフェに行ったり、ショッピングモールに行ったり。
例の男友達は上京したけど私たちとの交流は続いていて、男友達の家に一緒に泊まりがけで遊びに行った。部屋がないとかで、私は布団を彼の隣に敷いて寝た。
何度も会ってLINEも続いて、うまく行くと思った。彼氏持ちの友人も、うまく行くよと言ってくれていた。
あとはいつ告白してくれるだろうか、わたしから言ってしまおうか。
アピールするつもりで言ったのに、彼にはもう別の春が来ていた
初めて会ってから1年が経った、ある秋の日だった。
この日もアピールしたくてLINEで、「春が来ない~!」なんて遠回しに言ってみたりした。
その返信は「俺には来たんだよね~!」だった。
その返信を開いたのは忘れもしない、自動車学校のトイレの前だった。
家に帰るバスの中で、人目も憚らずボロボロ泣いた。
こんなに好きになったひとは初めてだった。
その日はずっと涙が止まらなかった。
夜中、寝られなくて水を飲もうとキッチンに立った時、置きっ放しにしていた包丁が目についた。
これで手首を切ってしまおうか。
死んでしまいたい。
こんなので死ねるわけないなんて知ってはいたけど、考えずにはいられなかった。
まあ、結局リスカをするなんて出来ずに、ベッドに入ったわけだけど。
告白もできなかった私の恋愛は呆気なく終わった。
恋愛が身を滅ぼすなんてことがあり得るとおしえてくれてありがとう
春が来たっていうのは、彼に彼女ができたってことだった。
高校2年まで付き合って、受験生だから受験に集中しようって別れて、大学に合格したからまたよりを戻したんだって、例の男友達に聞かされた。
ふられた理由は、ずっと頭の中には元カノがいて、私のことなんか最初から見てなかったってことだったらしい。
ふられたら黙っていても涙が出てくるってこととか、本当に好きだから体をもらって欲しいと思うこととか、恋愛が身を滅ぼすなんてことは現実にあり得るんだとか、知性や理性が当てにならないってこと、おしえてくれてありがとう、なんて。
それから、一度ダメになったカップルがよりを戻して、うまく行くなんて有り得ないし
幼なじみがカレカノになれるなんていうのも考えられないよね!
私はどうやら恋愛を拗らせてしまったらしい。