誰かを「好き」という気持ちが、わからなかった。わからない、高校生だった。
わからないけれど、告白されれば付き合った。楽しそうだから。興味があるから。もちろん誰とでも付き合ったわけではないけれど、あの頃の私にとって恋愛は現実逃避であり、自己の成長のためであった。
違うクラスのYくんと付き合って、好きとかわからないけど楽しかった
高校3年生の秋。違うクラスのYくんと付き合った。話していて楽しかったし、彼に興味があったから付き合った。
この時期、私は推薦で大学が決まっていたけれど、Yくんはこれから受験をするようで、じゃあなんで今告白してきたのかと思いつつも、彼の受験のことを気にかけていた。だからそんなには会えなかった。教室も端と端で離れていて、廊下ですれ違うことがたまにあったくらい。廊下ですれ違っても恥ずかしいから、互いに目配せをして、知らん顔して過ぎ去る。
学校で会うのはいつも人がいない、階段下付近だった。短いお昼休みにそこで話をした。知り合いが通ると、恥ずかしさと得体の知れない誇らしさが私の中に生まれた。
放課後や休日は、2人で遊んだ。放課後は学校からバスで大きな駅に行き、カフェとかファミレスとかで軽食を食べながら、おしゃべりをした。休日は大きな駅で待ち合わせをして、そこからショッピングセンターに行ったり、県外の都市部に行ったりした。
楽しかった。なんとなく、楽しかった。Yくんが好きとかはわからないけれど、なんとなく楽しかった。
大学進学のとき、私たちを待っていたのは「遠距離」だった
私たちの交際をしている日数が増えるとともに、Yくんの受験も本格化してきた。彼はある資格をとるための学部に行きたくて、そのために学部を一番重視して受ける大学を決めているようだった。だから、彼の受験予定の大学は、全国各地にあった。北は東北、南は九州まで。
Yくんの父親は厳しいようで、Yくんはたまにこっそりと愚痴を言っていた。彼の言葉に共感しナーバスな気持ちになるとともに、彼の普段とは違う一面に私は興味を持っていた。それは、Yくんだからこその興味ではなく、自分とは違う人間への興味だった。年齢は一緒だけど、性別も家庭環境も違う。私には父親がいないし、母親も厳しくないから、Yくんの家庭環境が物珍しかったのだ(表現が悪いけど)。
Yくんが全国各地の大学を受け、落ちたり受かったりして、そうして最後に、彼はおそらく第一志望の大学に受かった。「おめでとう」と心から思った。
けれどその大学は、私たちが今いる県でも、その近くでも、私の進学先がある場所でもなく、それら全てから遠い、私には馴染みのない県にあった。
その頃の私は、遠距離恋愛は無理だと思っていた。Yくんから、その遠方の大学に進学すると決めたと連絡を貰った時、私は別れようかなと思った。Yくんへの気持ちよりも「私は遠距離恋愛に向いていない。できない」という自分への気持ちが、勝ったから。
Yくんから、進学先を決めたという連絡をもらってから、あまり時を置かずして、私はYくんに「別れたい」と言った。ちょっと揉めたけれど、私とYくんは、高校3年生の冬に、別れた。
幼かった私が高校生の時の恋愛。でも「無駄だ」とは思っていない
今思うと、本当に幼い恋愛だった。Yくんには悪いことをしたと思う。冒頭にも書いたけれど、私が高校生の時の恋愛は現実逃避で、自己の成長のためだった。
でも、私はそれを「ダメだ」「無駄だ」とか、そんな風には思っていない。それがあったから、今の私がいると思っている。
その後、Yくんとは、ずっと連絡を取っていなかったけれど、大学2年生の時に高校の同窓会で再会した。同窓会の後も何度か連絡を取り合って、帰省した時に2人で会った。別に、私たちの間に何かが起きることはなかった。Yくんには当時好きな人がいて、私は相談にのっていた。そんな間柄だった。だんだんと連絡が途切れ、会うこともないまま大学を卒業した。
今現在、Yくんを私は知らない。資格を取って、専門職として働いているのだろうか。どんな風でも、楽しくやってるといいね。Yくん、バイバイ。ありがとう。