高校3年生の夏に1つ年下の彼氏ができた。同じ部活で帰り道も一緒。先輩の私によく懐いてくれて、年下と言うこともありとてもかわいい後輩だった。
小学生や中学生の頃に付き合うことになった人は、幼いということもあり友達の延長線上の関係で、自然に終わることが多かった。そのためこの年下の彼氏は私にとって初めてのちゃんとした”恋人”だったのだ。
その人と一緒にいるだけで嬉しくて、常にその人のことばかり考えていて、私の24時間がその人を中心にさせていた。そのくらい私にとって楽しいときだったのだ。

遠距離恋愛、ひとり暮らし。少しずつ束縛されるようになった

私が高校を先に卒業して県外の大学に進学することになり、私と彼との距離は片道6時間。2人とも初めての遠距離恋愛をすることになった。
彼と毎日のように会っていた生活とは変わり、初めてのひとり暮らしで、知り合いも誰もいない土地ということもあり、すぐに寂しい生活になっていった。しかし、彼が月に1回会いに来てくれたりLINEもくれたりしたおかげで少し寂しさが軽くなった。

大学生活に少しずつ慣れ始め、先輩や友達も少しずつ増え新しいバイトの仲間も出来た。彼氏が中心だった生活から、自分の身の回りの人たちとのつながりや自分の好きなことや興味のあることにも意識が向くようになり生活が楽しくなっていった。
しかし、遠距離の彼氏から少しずつ束縛がされるようになっていった。門限は20時までで、サークルの集まりに男がいたら行かないこと、など大学生活を送る私には厳しいものばかりだった。それでも可能な限り守ろうとは努力した。

遠距離が1年ほどたち、彼は県外の専門学校へ進学しひとり暮らしをすることになった。私との距離は2時間早まって4時間になった。
しかし、金銭面ではほとんど変わりなく会う回数も変わることはなかった。
彼と私の生活は同じひとり暮らしでも違っていた。私は親からの仕送りは一切ないため夜遅くまでバイトをする毎日。一方彼は、毎月充分な仕送りをもらい家賃や光熱費も払ってもらっており、バイトをしない生活だった。家庭環境が違うためそこは割り切っていた。

会いに行って、ストレスが溜まって帰る遠距離…

月に1回彼と会う時は、ほとんど私が行くようになっていた。しかし、ひとり暮らしをしたからか交通費を少しも出してくれず、デート代も私が払い、食費も小銭しか出さないようになった。
彼は私との時間にはお金がないと言って出さないが、ゲームへの課金を費やしすぐにお金を消費していた。すぐにお金がなくなるため私の誕生日プレゼントも渡してくれなくなった。彼の家に泊まっても家事はやってくれず、お風呂掃除や洗濯物まで私がしていた。彼のために料理を作ってもスマホの画面を見ながら食べ、料理の感想を聞いても「お母さんの方が美味しいな」と答えた。ついには、私が会いにいくのをわかっているのにそのタイミングで母親をアパートに呼んで料理を作り置きさせ、溜まりまくった洗濯物をしてもらっていた。
毎月会いに行ってストレスが溜まって帰るの遠距離を1年ほど繰り返していた。

大学の友達に彼の話をするたびにいつも「別れた方がいいよ」と言われていた。私は彼の顔がもともと好きで、こんなに私のことを好きになってくれる人はいないと思い込んでいた。また新しい彼氏ができるとも思っていなくて、別れて1人になるのが怖かった。

そんな遠距離生活も2年が経とうとしていた。大学の春休みということもあり、彼の家に約1ヶ月間行くことになった。
私はその1ヶ月間働く派遣バイト先を見つけ面接も合格し、働きはじめた。私の勤務時間は12時から21時というなかなか長い時間だ。彼は春休みだったので家にいるので、夜ご飯は彼にお願いすることにした。しかし、私が21時に帰宅しても晩ご飯は何もなく、朝の食器がまだ机の上に上がったままだった。頼んでおいた洗濯物も何も手がつけられていなかった。
私は彼に「晩ご飯ある?」と聞いてみた、すると「え、食べるの?」と言われてしまった。彼は私が共同生活していることを理解していないようで驚いてしまった。その時から少しずつ冷めていくのを感じた。

彼は凄い形相で掃除機を床に叩きつけ、怒鳴り散らした

こんな生活が1週間ほど経ち自分がどんどん疲れていくのを感じた。友達と話したくなり電話をすることにした。その時の私は疲れすぎていて、彼と同じ布団に入りたくなかったので朝まで電話をしていた。電話はあっという間で朝になり彼が起きたので自分も寝ようと思い電話も切ろうとしていた。

ふと彼を見ると彼は鏡の前で凄い形相で独り言を言っていた。そしてすぐ掃除機を手に取り私の目の前でそれを床に叩きつけ、私へ突然怒鳴り散らした。怒った内容は私が朝まで電話をしていたことだった。
そもそもなんでそんなことで怒られているのかも謎だったが、それよりも彼がそんなに怒るのが初めてで、殴られるのではないかと思った。私はすぐに涙目になり恐怖で声も出なくなり震えてしまった。
怒り終わった彼は最後に私に「何か言いたいことないの?」と言ってきて、私はやっと出た声で「別れたいです」と一言だけ。それを言えた私はすぐに無言で荷物をまとめた。彼は私の一言に困惑しており、動揺してただ立ち尽くしていた。私は、まとめた荷物を持って「じゃあね」と言って足早に去っていった。

電車に乗りながら、私は一気に彼から解放されたような気がしていた。長く付き合っていたが、後悔は何も残らずむしろ心の底から解放されたことへの安堵の方が大きかった。
あの時の私は、自分の身も心もすり減らしながら彼のためと思いながら生きていたような気がする。我慢をし続けたことで自分を押し殺しながら生きていたようだった。
彼と別れたことで自分が大切にしたい友達や新しい彼氏とも出会い、自分が自分らしくストレスなく生きることができた。自分らしく生きることで自分のやりたいことや好きなことを見つけられ、自分の将来を見つけることも出来た。

あの時の私がもっと自分を愛して大切にしてあげていればもっと早く解放することができたのだろうと思う。
あの時の私へ一言「弱くてごめんね。」。