「だってもう、今更子どもとかつくれる?」
と別れ話の時に言われた。

同棲して数年。もう2年はセックスしてないだろうか?
友だちに話したら、むしろよく今まで別れてなかったね、と言われた。
セックスなんてしなくても、私は彼と暮らしている日々が楽しくて、毎日幸せだった。
結婚もしたかったし、一人で将来の生活を思い描いてワクワクしていた。
身体の関係がなくても、誰よりもお互いのことを知っていたし誰よりも仲良しだったなあ。そう思っていたのは私だけだったんだろうか?
2年前から、ゆっくりと、ゆっくりとすれ違っていたのだろうか?

セックスがどうのこうのじゃない。あなたから逃げた傲慢な私のせい

付き合い始めたのは、私が学生のころだった。
私が社会人になったころにはすでに一緒に住んでいたし、毎日仕事の相談にものってもらっていた。

いわゆる「ブラック企業」と言われてもおかしくない職場で、毎日毎日忙しかった。終電を逃し、タクシーで帰る日もあった。定時上がりなんてほとんどなかった。
そんな日々の中で疲れていたから、セックスのムードになっても「今日疲れているから」とやんわりと断っていた。
彼は悲しそうにしていたし、私も申し訳なかったけど、断り続けるうちに、そのうち全くそういうことがなくなってきた。

そんな大したことないと思ってたけど、ふられた今だから分かるよ。
あなたと向き合えていなかったんだなって。
仕事の忙しさに逃げて、逃げて、目の前の大切な人に向き合えていなかった。
セックスがどうのこうのじゃなくて、あなたの声に耳をかさなくなっていた、傲慢な私がいたみたいだ。

失恋ソングもマッチングアプリも、寂しさを埋めてくれない

不思議なもので、ふられるまで本当に気づけない。
ふられて、別々に暮らしはじめて、やっとあなたにふられた理由に向き合えるようになった。
分かりやすく、音楽アプリで「失恋ソング」なんて調べちゃってるよ。
あまりにショックすぎて、急にマッチングアプリとか勢いではじめてみたよ。

同棲を解消したから、久しぶりの一人暮らし。
思いの外自分の時間があってびっくりした。

休日は何も予定がないけど、とりあえずカフェに行って仕事したり、たまにはいつもよりほんの少し高級なピザやチョコレートを食べたりして、ちょっとした贅沢をしたり。
一人暮らしって、全部自分の時間なんだ、ってそんなことに改めて寂しさを感じている。

何をしててもあなたのことを思い出す。でも、いつか過去になるから

長い間一緒に住んでいたから、何をしててもふとした瞬間に思い出す。
私のこの手料理好きだったな、とか。
この服は二人で買いに行ったな、とか。
このお笑い番組を毎週見るのが日課だったよな、とか。

悲しくて悲しくてくやしいけど、まだ未練はあるけれど。
あの時ふられてよかったな、とはまだ思えないけれど。
でもこの悲しさもいつか過去の話にはなるはずだから。
私は、今は仕事をがんばるよ。
悔しいけれど、しばらく未練があるけれど。

いつか振ったことを後悔させたい、と思ったこの瞬間すら忘れるくらい
絶対に幸せになるんだ、私。