サバイバルゲームを始めて6年が経つ。敵チームと味方チームとに分かれ、エアガンと呼ばれるおもちゃの銃でプラスチックの弾を撃ち合うゲームだ。

男性のホモソーシャルな悪ふざけ、セクハラやマウンティングにうんざり

ここ数年でサバゲの世界はずいぶん間口が広がり、多種多様な人がプレイするようになった。迷彩服やヘルメットで身を固め写真を撮りあって喜ぶ人もいるし、ひたすら銃の性能やカスタムにこだわる人もいる。「マッドマックス」や「北斗の拳」みたいな世紀末風のオリジナル衣装で戦う人もいるし、映画やアニメのキャラクターのコスプレでゲームを楽しむ人もいる。
バラエティ豊かなプレイヤーが集まるようになったサバイバルゲームだが、それでも私が見るかぎり女性サバゲーマーの数は全体の10%、いや5%もないだろう。それくらい男女比が偏っている。私がサバイバルゲームに行くと、サバゲフィールドのスタッフも含め女性は自分だけ、という状況も珍しくない。
それだけにサバイバルゲームの世界にはまだ、男尊女卑的な空気が色濃く残っている。
男同士で女性やLGBTをネタにするホモソーシャルな悪ふざけや、男性サバゲーマーからのセクシャルハラスメントやマウンティングに、うんざりすることも多い。

こんな扱いをされるのは嫌だ、とサバゲをやめる女性を何人も見てきた

日本最大のサバゲチームを追い出されたことがある。
そのチームの中ではいわゆる「“オンナ”を物扱いする」ホモソ発言が飛び交っていた。外国人女性が新メンバーとして加入した時に、“部長”やその取り巻きの男性メンバーが「外人の女のコ紹介してー!」と群がったり、AV女優として働いているメンバーの出演作品の話で盛り上がったり、明らかにセクハラなやり取りが、数百名(そのうち女性が数十人)がいるチームの中で横行していた。
私自身もその部長から、暗にセックスの誘いをかけるようなメッセージを個別に送りつけられたことさえある。そのたびに「そういう行為は女性に失礼だからやめてください」と指摘するうち、「あなたはうちの部の空気を悪くするから」と、部長からいきなりグループを退出させられたのだ。
また、三重のサバゲフィールドの公式Twitterアカウントが「うちで女性無料サービスをやっているのは、メンズばかりより花があった方が仕事が楽しいからです」と堂々と書いてしまい、物議を醸したこともあった。女性サバゲーマーを“花”扱いするなど、平成どころか昭和の価値観というものだ。
サバイバルゲームの世界で、こういった性差別はあまりにも日常茶飯事。
ゲームは楽しいけれど、こんな扱いをされるのは嫌だ、とサバゲをやめてしまう女性を何人も見てきたし、そのたびに歯痒くてしょうがなかった。だからサバイバルゲームを変えたい、と思っている。

性差別をなくすため、ジェンダーフリーで楽しめるようにするために

私がサバイバルゲームを変えるなら、ゲームのルールや道具ではなく、サバゲーマー達のジェンダー観を変えていきたい。それはつまりサバイバルゲームだけでなく、社会を変えるということになるのだが。
女性限定のサバゲイベントもやりたいけれど、やっぱりあらゆるジェンダーの人が分け隔てなくサバイバルゲームを楽しめるのがいい。
そもそもサバゲは本来、とてもジェンダーフリーなゲームだ。他のスポーツと違って、男女の筋力差や体格差などに捉われず、銃の扱いと戦略次第で誰もが対等に戦える素晴らしい遊びだと思っている。私はサバイバルゲームを本気で愛しているので、これを「“非LGBTの男性”だけが楽しめるゲーム」にしておきたくない。
そんな思いを胸に、私は友人達とサバゲイベント「チルサバ」を運営している。性差別やLGBT差別なく、誰でもチルアウトできるサバイバルゲームをやりたい、という思いで立ち上げたものだ。
運営陣は女性とLGBTのメンバーだけで構成されている。イベントの際、最初にルールなどを説明する時に「LGBTとは何か」「どのような行為が性差別にあたるか」などを分かりやすく伝えている。

サバイバルゲームの世界から性差別をなくすために、私ができることは決して多くはない。
1回のサバゲイベントの参加者は多くて20人だし、開催頻度は頑張っても2ヶ月に1回というところだ。
でも、サバイバルゲームが初めての女性やLGBTの人たちに「サバゲって怖いイメージもあったけど楽しかった!また参加したい!」と言ってもらえることが何よりの励みになって、1年以上続けられている。
これからも、性差別をなくすため、ジェンダーの区別なく誰でもサバイバルゲームを楽しめるようにするために、自分にできることを少しずつでもやっていきたいと思う。

変えるなら、ではなく、変えていく。サバイバルゲームも、社会も。