「あれ、なんで私なんだろう。他にもいるのに。」
顧問の先生に次期部長として自分の名前を呼ばれ、そう思った。

私は高校からバドミントンを始めた。
同級生は10人いて、その半分が中学から続けてきた経験者。小学生のころからテニスをやってきた私はラケットには慣れていたため、高校1年生の秋には経験者と試合をできるところまで順調に成長できた。経験者と対等に打ち合えるようになったころには試合のメンバーに選ばれることが目標となっていた。

部活になかなか馴染めない後輩と「しっかりペアになる」ってどういうこと?

春になり、後輩が10人入ってきて経験者が3人いた。ライバルにもなりうる仲間が増えたことで少し焦りもあった。直近の大会の試合メンバーにはまだ選ばれることができなかったため、初心者の後輩の指導や経験者の後輩の指導、自分の練習とすべてに全力を注いだ。練習に対する強い気持ちと明るさだけを取り柄として頑張っていた。

後輩の経験者の中に、みんなが徐々に部活の雰囲気に馴染み始めている中、まだ馴染むことができていない控えめな子がいた。他の子は話している時に笑顔になったり、練習中にもコミュニケーションを自然に取れるようになっていったが、その子は上手なのにどこかまだ溶け込めていないような気がして、私も気にしていた。

そんな中、新しいペアが発表された。私の新しいペアはその後輩であった。
顧問には、その子が持っている良さを引き出すような動きをしろ、しっかりとペアになれと言われた。
最初はその意味がわからなかった。その子の良さ、それはただプレイ中のバドミントンの技術のことだと思っていた。

ペアになれという言葉はよくわからなかったが、とにかくその子とコミュニケーションをたくさんとるように心がけた。
自分のこの言動が求められているものと一致しているかは自信がなかったが、少しずつではあったものの、コミュニケーションをとることも自然にできるようになっていたり、後輩もチームに馴染み始めてきていたり、ペアとしての連携もうまくとれるようになっていた。

自分も、個人としてももっと成長しなければ試合メンバーに選ばれないと感じ、練習後に残って先輩に教えてもらったり、男子に一緒に打ってもらったり、朝早くいってサーブの練習をしたりと自主練習を重ねた。

次期部長に選ばれた。経験者がたくさんいる中で責任を果たせるのか…?

あっという間に先輩が引退することになり、次期部長が顧問から発表されることになった。静まり返った空間で私の名前が呼ばれた。
私は最初、驚きが大きく自分の名前が本当に呼ばれたのかさえ分からなかった。
経験者が半数いる中なぜ私が選ばれたのか、自分に責任ある仕事が務まるのか、自信がなかった。
だが、選ばれてからはただひたすらにチームのことを考え、まとまりのあるチームになるように、また、試合メンバーに確実に毎回選ばれるように人一倍努力した。

時間は刻々と過ぎ、自分たちの代の最後の大会が訪れた。
努力が報われ、個人戦でも団体戦でもメンバーに選ばれることができ、試合に出場し、最後まで自分のバドミントンをして、私たちの代は高校バドミントンの幕を閉じた。
引退する際になぜ部長に選ばれたのかを顧問に尋ねた。
「能力の差は小さいが、努力の差は大きかった。」

この返事が返ってきたとき、今までの自分が認められたような気がした。
さらに、初めは控えめだった後輩からのメッセージの中に、
「みんながピンチの時に力強く励ますヒーローのようだった」
と書かれていた。
この一言にこんなちっぽけな私でも誰かのヒーローになることができるのかということに気づかされ、考えが変わった。

些細な行動でも人を勇気づけたり、元気にできる力がこんな私にもある。このことを知ることができたことは、これからの私の生き方を大きく変えるだろう。