乗って行く?の一言が嬉しくて、どんなに大雨でも私の心は晴れ模様。ああ、なんと単純な。

晴女の私は、晴れが好きで、雨はちょっと「ダルい」と思ってる

私は晴れ女。それもなかなかの晴れ女。
大事な試合、年一の行事、楽しみにしていた日、雨が降った記憶がほとんどない。ということで、雨の日といえば!なんて思い出がない。

それでも20年以上生きていれば、当たり前だけど、雨が降る日はある。
傘があるのにびしょ濡れになってた小学校の登下校、土砂降りの日の試合、雨で貸切状態のビアガーデン。どれも、とても楽しかった。とてもいい思い出。雨は雨で楽しいから憂鬱になったりはしない。

でも私は晴れが好き。そして私は晴れ女。
天気なんて晴れてなんぼ!できることなら毎日晴れてほしい!雨は嫌いじゃないけどダルい!なんか好きじゃない!洗濯物乾かないし!お日様は偉大!!!!
明日の天気が傘マークだと、あー、まじかー。となる。
そんなタイプだった。

先輩が車で送ってくれるのは雨の時。傘マークを見て心躍らせた

そんな私でも、傘マークを見て心躍らせる時期があった。朝起きて、雨が降っているのを見て、ラッキー!と思う時期があった。
だって、雨が降っている日は、憧れの、大好きな先輩が車で送ってくれるから。

日頃は原付ユーザーの私は、雨の日には移動手段が徒歩になる。先輩はそんな私をいつも家まで送ってくれた。
帰宅時、私が歩いていると、後ろから車の音が聞こえてくる。ライトが私の背中を照らし、影が前方に伸びる。私の手前で車のスピードが落ち、横に並んだところで助手席の窓が開く。そして中から先輩が私に声をかける。「乗って行く?」と。
私はちょっと遠慮するフリをした後で、じゃあお願いします!と言って乗り込む。2人きりの時間が始まる。

そうは言っても家まではたったの5分。ほんの僅かな、つかの間の先輩と2人になれる時間。他愛もない話をする、ほどの時間もなく家に着いてしまう。それでも、そのたったの5分で私は幸せになれた。

送り届けてもらった後はもう脳内お祭り騒ぎ。今日も送ってもらえたー!やったー!雨最高!!雨ありがとう!!なんて思いながらルンルンでアパートの階段を登っていた。雨の神様に感謝していた。
次の雨はいつかな~といつも雨を心待ちにしていた。

やっぱり雨は好きじゃない。先輩の車は雨でも通り過ぎるように…

私はなんて単純な女だったんだ。雨の神様ってなんだ。
今は、あの幸せな時間を心待ちにしていた、祈るような気持ちでまだ雨の降っていない曇り空を見上げていた日々を懐かしく思う。

今はもう雨の日には1人歩いて帰宅している。お気に入りの逆さ傘を差して、水たまりを避けながら、足早に帰宅している。

先輩と私は、先輩と後輩でなきゃダメだった。それを受け入れられなかった私は、また1人で歩いて帰宅しなければならなくなってしまった。
後ろから来る先輩の車は、一切スピードを落とすことなく、私の横を通り過ぎる。毎回、「もしかしたら今日は止まってくれるんじゃないか」と淡い期待を抱く。でも、あっという間に見えなくなる。その度に、鼻の奥がツンとなる。その感覚をどうにか無視して目線を上げる。そして、逆さ傘特有の内側にある絵柄を見ながら、歩いて帰る。

やっぱり、雨は好きじゃない。