私は恋をした。こんなに誰かを想ったのはきっと初めてだ。

マッチングアプリで出会った彼。恋愛に臆病な私の心を開けてくれた

私達が出逢ったのはクリスマス前。カップルたちが心躍らせる季節に、今流行りのマッチングアプリで出逢った。
メッセージをやり取りし、実際に会うまでは1週間程度だったと思う。初めて会ったような気がしないほど話が弾んだ。メッセージを重ねていくうちに、恋愛に臆病な私の心をあれよあれよと開いていき、好きこそ伝えないものの恋人同士のような電話をするほどになっていた。

2度目のデートで彼が告白をしてくれて付き合うことになった。マメな彼は毎日連絡をくれて返信もすぐに返ってくる。そして「好きだよ」と沢山伝えてくれた。
それから週に1度、デートをした。彼は女友達といるような居心地の良さと紳士的にリードしてくれる安心感を兼ね備えている素敵な男性だった。

こういう家庭を築きたいという話もして、お互いに結婚という未来も考えていた。彼と一緒にいる時間はこれまでに感じたことがないほど幸せだった。

連絡頻度が減り、別れたいのか聞いてしまった私。彼からの返事は…

付き合って1ヶ月が経った頃、彼の仕事や趣味が忙しくなり、会うことが難しくなった。それでも毎日「おはよう」と「行ってきます」「ただいま」のやりとりが嬉しかった。
会えない日々が続く中で私は彼に寂しい気持ちを漏らしてしまった。その頃から彼が送ってくるメッセージは「ごめんね」ばかりになり、既読になるまでに何時間もかかるようになった。いつしか電話もしなくなった。

少しでも彼と繋がっていたい私は、友達と行ったカフェの写真と共に、私は私で楽しい休日を過ごしているから大丈夫とメッセージを送った。彼からは「寂しくさせてごめん、楽しそうで良かった。でも、すごく辛い」と返ってきた。
その時は意味が分からなかったけれど、きっと彼は追い詰められていたのだと思う。限界だったのだと思う。

毎朝の挨拶は相変わらず送ってきてくれるのに、最初の頃より連絡頻度が減ってしまったことに不安を感じ、別れたいか聞いてしまった。既読が付いているのに返信が来なかった。
翌日、曖昧な返事をしてきた彼に私は追い打ちをかけるようにもう一度聞いた。「今は疲れてしまったから少し距離を置こう」と言ってくれることを期待していた。

彼はきっと真剣に考えてくれたのだろう。1日経ち、早朝に「別れよう」と返信がきた。私のことを幸せにできないから申し訳ないという理由で。期待は見事に打ち砕かれた。
私は別れたいだなんて1ミリも思っていなかったが、自分が彼の負担になっていることに気付き、この手を離すべきだと決断した。
私が離れれば彼の心は楽になる、そう思った。

別れようと告げられた日もいつも通り、「おはよう」と送りあった

別れようと告げられた日は私も彼も仕事だった。夜返信するとだけ伝えていつものように「おはよう、いってらっしゃい」を送り合う。これが最後の「おはよう」になるのだと思うと画面を見つめる視界が霞んだ。

最後に彼の好きだったところと感謝の気持ちを綴った長文のメッセージを送った。彼も感謝の気持ちを伝えてくれた。
最後まで私を傷つけず、優しい言葉を綴る彼を嫌いになることなんて出来なかった。いっそのこと、私のことを嫌いになったと振ってくれたほうが良かった。

今もまだ、彼の笑顔と私より少し大きい手の温もり、私の名前を呼ぶ優しい声が忘れられない。別れたのに大好きで大好きでたまらない。本当はずっと一緒にいたかった。
でも、私と別れたことで彼の心が楽になったのなら、それでいい。