夜のしとしとと降る雨音を聞くと、3年前を思い出す。

あの日は、マッチングアプリで知り合った彼が、6時間ほどかけて会いに来てくれた。

アプリで出会った彼は、初対面なのに前から知ってるような感覚だった

彼と知り合ったのは4年前だったけど、遠距離であったのと私自身の学校が多忙だったために、LINEと電話をする関係で会う機会がなかった。でも、3年前の4月、新しい土地での新生活への寂しさから「GWに遊びに来てくれない?」と冗談交じりにLINEすると、「いいよ」という一言。冗談で言ったから、その返信を二度見してから「本当にいいの?」と確認してしまった。

その後は、とんとん拍子に日程が決定し、GW4日目に彼と初めて会うことになった。お互いお酒好きということで「一緒にお酒を飲みたいから家に遊びに来てよ」と言うと、手土産を持って家に遊びに来てくれた。

玄関先で初めましてだったけれど、なんだか初めて会う感じがしなかった。おかしいかもしれないけど、前から一緒に過ごしているような感覚。彼の手土産をつまみながらお酒はすすんだ。

過去の恋愛の話になって、彼は私の質問に丁寧に答えてくれた。彼も私の過去の話を聞いてきたが、初対面の人に私の過去を話せないと思ったので、ほとんどを曖昧な回答にしてしまった。不誠実だとは思ったけれど、どうしても勇気が出なかった。

翌日は、1日中雨が降っていた。「傘を持ってきていないから一緒に入れて」と相合傘で、観光地巡りをした。一緒の歩幅で、時々「歩くスピードは大丈夫?」と気にかけてくれた。実際に会って数時間しか経っていなかったが、私は彼が大事なんだなと、なんとなく感じたと同時にトラウマがよみがえった。

彼は真正面から、私の「過去の恋愛やトラウマ」を受け入れてくれた

夜になって夕食をどうするか決めるときに、雰囲気のいい割烹を見つけた。そこは穴場の名店らしく、常連客が数人いた。ここでもやはりお酒を飲みながら、食事と会話が弾んだ。

しかし、彼の「今回なにも考えずに適当に俺に連絡してきたんじゃない?」という一言で私は少し彼にきつく当たってしまった。「そんなことはない」と。私は自分の過去の恋愛を話さなくては、きっと伝わらないんだろうと感じた。「自宅に戻ってから話す」と言い、なんとなく気まずい雰囲気の中、食事を終えた。

自宅に戻ってから、彼はお茶を用意してくれて向き合うように座った。彼は何も話さずに、私が話すのを待ってくれた。30分ほどの沈黙の後、私は勇気を出して口を開いた。

中学生の頃、好きな人ができて友人は応援してくれていたが、付き合うことを伝えた翌日からいじめにあったこと。友人もその人のことが好きだったらしく、私を許せないと3年間いじめにあい、人を好きになってはいけないのかと怖くなった。

高校、専門学校では友人に恵まれ人の温かさを感じたが、やはり恋愛には消極的になっていた。そんな中、ある友人からいい人がいると1人の男性を紹介されたが、体が目的だったようでされるがままだった。体だけの関係にショックはあったものの、友人たちが支えてくれたこと。

結構ワガママなことを言った私の思いも涙も…彼は受け入れてくれた

私の価値はなんなのだろうと迷いながらも、1人の人を愛してみたいという思いがあって、知人の紹介なく自分の意思で決められる(始められる)マッチングアプリを使ったこと。使い始めてすぐに彼と出会い、やり取りをして人柄に惹かれたこと。今回遊びに来てほしいと連絡したのも、彼に会ってみたかったから。

「貴方が他の女性と仲良くすることに口出しは出来ないけど、私は貴方が他の女性と親密な仲になるのは嫌だ」と。今思えば結構ワガママなことを言った。でも、それが私なりの伝え方だった。わけも分からず、涙がでてきた。

彼は静かにすべて聞いた後に「話してくれてありがとう。過去は変えられないけど、君の気持は伝わった」と頭をなでてくれた。「君の感情豊かなところ、びっくりするくらい気を遣うところを見てて、もっと君を知りたいと思っているんだけど、どうかな」と彼は言った。

びっくりして、嬉しくて、止まりかけていた涙が再び溢れた。涙と笑顔でぐちゃぐちゃになりながら頷いた。その日は、雨音がいつもより優しく感じた。

あれから3年、今も遠距離だけど彼への愛は変わらない。ありがとう、愛しています。