一緒に過ごした時間は短かったし、多くのことを話したわけでもないけれど、とても大切な友達がいる。

同じクラスになって半年くらいして、その子とたまに話すようになった

その子は小学校3年か4年の時に転校してきた。転校してきた時はクラスが違ったので、あの子が転校生か、くらいの認識しかなかった。
転校生がきた!とその子に興味を持って話に行ったりしている子もいたが、もともと小学校自体があまり好きでなかったし、冷めた子供だったので特にその子と接点もなかった。
小学5年生になってその子とクラスが一緒になった。クラスが一緒になっても最初は特に話すこともなかった。半年くらいしてから、その子とたまに話すようになった。ピアノが弾けるの、同じだね。みたいな会話だったかもしれない。
正直、きっかけははっきり覚えていない。後から聞いた話だが、その子と私が似ていたのもあって先生が二人が話すようになったらいいなと思っていて、上手く陰で繋ごうともしていたらしい。だから、きっかけは先生経由だったかもしれない。
似ている部分と言えば、私もその子もどちらかと言えば同年代の子より落ちついている、成績は良い、読書が好き、ピアノが弾けるといった感じ。
私とその子は段々と一緒にいることが増えたが、その子は運動もできたし絵も上手だったこともあって、色々な子が興味を持って寄ってきていたから、常に一緒にいたわけではない。

転校を聞いた時は、ただ受け止めるような感じだったけれど

私は私でそれなりに一緒にいる友達もいたし、何より集団での人付き合いが全くもって苦手なので、その子の周りに他の子がいる時は近寄れなかった。
具体的に何を話していた、とかはあまり覚えていないし、多くのことは話さなかったと思う。その子も私も口数が多い方ではなかったから。ただ、一緒にいると落ち着いて自然でいられるような感じがした。
放課後、一度だけその子の家に行って遊んだこともあった。その時も何を話したかは覚えていないが静かにお菓子を一緒に食べたり、その子が飼っていた犬と一緒に遊んだ。

その子の家はいわゆる転勤族で、小学5年生が終わる頃に転校していった。
集会か何かが終わった後、二人で体育館から教室に戻る途中の廊下で告げられたことを覚えている。聞いた時は、そうなんだ、という感じでとても悲しい、とかよりただ受け止めるような感じだった。
ちょうど仲良くなってきたくらいでお別れするかたちになってしまったから、残念に思う気持ちが強かったかもしれない。転校してしまう直前には、手紙書くね、とかそんなやりとりをしたと思う。

その子が転校してから頻度はバラバラだったが、手紙のやりとりは大学1年生くらいまで、結構長く続いた。
私は中学も地元の公立の中学に進んだので、小学校とほぼ同じ人しか周りにおらず、大して新しい友達もできなかった。だから、高校に上がって環境が変わるまで、“一緒にいて落ち着く、対等で、大切な友達”と思えた友達はその子だけだった。
私もその子も高校は公立の進学校志望だったので、手紙のやりとりは私にとって密かに心の支えともなっていた。

小学校では、話をしなくても気まずくないような対等な友達がいなくて

私は特にいじめにあったわけでも友達が全くいなかったわけでもなかったが、なんとなく小学校が合わなかった。
それなりに友達はいたが、同い年の子はどうにも子供っぽく思えたし、友達と遊ぶくらいなら本を読んでる方が断然楽しかった。実際、大人びているなどと言われることも多かった。変に勘ぐったり、同調しなくていいとか、話をしなくても一緒にいるだけでも気まずくないような対等な友達がいなかった。
私にとってその子は小学校でできた、唯一の対等な友達で、人生で初めての“一緒にいて落ち着く、対等で、大切な友達”。半年間くらいしか一緒にはいられなかったけれど、小学生の時にできた、唯一の大人っぽい、多くは話さなくても居心地の良い友達。
当時の私と話してくれてありがとう。最近はあまり連絡も取れていなかったが、やっぱり今でも大切に思っている。
また世間が落ち着いたら、ゆっくりお茶でもしながら話したい。