「好きな和菓子は何ですか?」
何てことない平凡な質問を、私は、質問広場でみんなに投げかける。
「匿名)いちご大福が好きです!」
「匿名)きんつば!」
「匿名)栗きんとん、ずんだ餅」
回答数が徐々に増え、20人ほどが返事をくれた。
私はお礼に回答者さんたちに、「いいね!」をつける。
気づけば、私はポイントのことを忘れてよく利用するように
ーー無料で利用できる質問広場。
きっかけはポイ活で、アンケートサイトに登録したのが始まりだ。
そのサイトには質問広場というものがあり、誰でも好きな内容の質問をすることができる
(誰かを傷つける内容や過激な質問は禁止されているが)。
回答することもできて、質問者さんから「いいね!」をもらえるとランキングが上がり、それに応じてポイントをもらうことができるという仕組みである。
初めは、ポイントを稼ぎたくてやっていたが、気づけば、私はポイントのことを忘れて、よく利用するようになっていた。
24時間365日、質問広場は開放されていて、ネットさえ繋がれば、質問や回答をすることができる。
怖い夢を見て起きてしまい、眠れなくなった夜中の2時ーー。
質問広場に遊びにくると、誰かが起きてて「起きている人、いますかー?」と質問している。
「はーい。起きてますよ」と私は文字入力して回答を送信する。
夜中に起きてる人が集まってくる。
みんなも起きてたんだと、どこか仲間意識を持って安心する自分。
夜中に目が覚めてバクバク不安になった気持ちはいつのまにか消えていた。
現実世界で誰か知り合いに相談したらいい? でも、実際は…
名前も分からない、性別や年齢も分からない誰かと、真夜中に繋がることができる不思議な世界。
しぃーんと静まりかえった夜に布団の中で、かたかたと携帯をさわって、私ってば、一体何をしてるんだろうと、ふと我にかえるときもある。
でも、質問広場にくると誰かがいる、返事をしてくれる。だからほっとするのだ。心がじわじわと満たされる。
依存するのは、よくないかもしれないと思うけれど、何か誰かに聞いてもらいたいことや悩みごとがあるときは、質問広場にきて質問してしまう。
そこで、なるほど!っていう回答をもらえたり、ただ吐き出せたりすることで、どこか気持ちがすっきりすることがあるのだ。
現実世界で誰か知り合いに相談したらいいじゃない?って思われるかもしれない。
でも、実際は、なかなか訊けないものである。
相談するのが恥ずかしい。
気を遣う。相手に何て思われるかとか。
忙しい友達に言うほど大した質問じゃない。
もしくは内容的に相談できる相手がいない。
だから、みんな質問広場にきて私と同じように質問する。
誰か分からない匿名だからこそ、気軽に質問することができるのだ。
気持ちが楽になる。私も答えられる内容なら、できるかぎり回答する
夫婦間のトラブルやケンカ、義母との関わり方、子育ての悩み、仕事や恋の悩み、学校の人間関係など。質問広場に寄せられる、みんなの悩みごとの内容も、さまざまだ。
SOS的な質問もある。
「誰か助けて、どうしたらいいか分からない」
一人一人が悩みごとを抱えて相談しにくる。そして、必ず誰かが優しく温かく答えてくれる。
質問広場に救われる。
「心配性な性格なんです。みんなはどんな性格ですか?」と何気なく訊いてみたとき。
「匿名)えっ、私もですよ!」
「匿名)自分はサバサバかなあ」
「匿名)心配性な性格って必要だと思いますよ。みんながみんな楽観的だと、世の中危険ですから」
と回答がきた。そして、やはり気持ちが楽になる。
逆に私も答えられる内容なら、できるかぎり回答する。
自分が救われたように、回答することで誰かの役に立てば、誰かの心を救えたらいいなと思いながら。
お互いに助け合う質問広場。
いや、回答することで自分自身がまた救われているのかもしれない。
いつもありがとう。
匿名のあなた。あなたに私はいつも救われています。