「週末、晴れだ。ごめん」と彼氏からのLINEの通知に、スマホを閉ざす。

手元のテレビに電源を入れると、週間天気予報は連日の晴れマーク。アナウンサーが「お出かけ日和ですね」と屈託に笑う。その隣で、そらジローは歓喜のジャンプ。背後にいるエキストラは、快晴の喜びを一同に分かち合っていた。

付き合って3年になる彼は農家。だから、「雨の日」しか休みがない

画面越しから伝わる幸福な姿に、私の抱くこの怒り、憎しみ、妬みの負の感情は一体、誰にぶつけたらいいのか。そらジローに、この握り拳を。

いや、それは見当違いだ。だが、太陽を死の宣告と涙を流す私にとって、太陽を崇め拝み敬拝する彼らの姿は、やはり相いれない。ため息と同時に電源を消してスマホを開く。

「残念。今週も会えないね」と、わざとらしく絵文字も使わず送信すると、すぐに既読になり「ごめんね」と返事。その後、届かぬ二度目のため息。

晴れが憂鬱になる未来がくるなんて、人生もまた予想は外れる。付き合って3年目になる彼氏は、農家の長男だった。大学を卒業して地元にUターン、実家を継ぐ形で専業農家になり、以後、遠距離恋愛真っ只中。

「週末雨だよ」と彼から連絡が来るたびに、人生を彩る恵みの雨となる

週末にデートの約束はするけど、基本、農家に休みはない。「畑の茄子の収穫が忙しいんだ」と、自然は容赦なく二人の約束を破っていく。「私と茄子、どっちが大事なの」って泣いた時は、さすがの彼もお手上げだった。

だけど、軽トラに収穫した野菜をいっぱいに積んで、「晴れているときに仕事ができてよかった」と小麦肌に焼けた彼の泥臭い姿はいつ見てもカッコいい。自然の下で働く彼の生き様を目にした時は、はじめて太陽が私に背中を押してくれたと思えた。

そんな土日祝日、休みなく働く彼の唯一の休日は、雨だった。「週末雨だよ!どこ行きたい?」と彼から連絡が来ると、あんなに憂鬱だった雨が、人生を彩る恵みの雨に変わるなんて、黄色い傘をさして歩く小学生は知りもしないだろう。

せっかくの雨だから遠出したいと土砂降りの中、ディズニーランドに行って、休業だらけのアトラクションでも心はずっと満たされていた。「このまま雨が続けばいい」なんて、私の恋の予報はいつも世間とズレている。

週末の晴天続きで嫌気がさしていた私に、彼からの「サプライズ」

でも、自分の理想通りの天候なんて続きはしない。平日の仕事帰りの豪雨は、ただ気分を悪くするだけ。「会えない時間に降ったって意味ないんだよ」と不貞腐れて歩いていたら突然、電話が鳴った。「いま、車でそっち向かってる」と、彼から突然の涙サプライズ。

連日の晴天で会えない日が続き、会えてもそれはデートではなく畑作業の手伝い。自然相手だし仕方ないよねって、悲しむことすら許されない自分の状況に嫌気がさした。だから、片道2時間かけて会いに来てくれた時は、それが雨なのか涙なのか分からないくらいにずぶ濡れに泣いた。「悲しんだら泣いてもいいんだよ。それは心の水やりだからさ」と農家とは思えぬキザな台詞に私の心は晴れた。

それでも、週末の天気の結果には、やっぱり落ち込む。こんな時は、気分転換に料理でもしようかなと、冷蔵庫を開けたら生産者(彼氏)の畑で採れた野菜の品々。雨にも負けず、風にも負けず。「強く育った野菜はうまいんだ」と笑った彼を思い出す。私も野菜同様、強く生きていたら、オンナとしての旨味も増すのかな?

ベランダのてるてる坊主が風で揺れた。心に秘めた雨を願う私のてるてる坊主。