「男性2名でのご利用は不可。※女性2名でのご利用は可」
これは、私が働き始めたラブホテルのルールである。

そこまで忙しくなく、時給は悪くないアルバイト。しかし厄介な懸念が

一念発起して会社を辞め、住み慣れた東京を離れ見知らぬ土地に住み、この春から専門学校に通うことにした。
勉学に専念したいところではあるが、生きていくためにはお金を稼がなければならない。そこまで忙しくないけど時給は悪くないアルバイトを探した結果、たどり着いたのがラブホテルのフロント業務だった。
いざ働いてみると、なかなか忙しく覚えることもたくさんあり、「楽して稼げる仕事なんてこの世にないよなあ」と当たり前のことを改めて痛感した。
特に大変なのが、勤務時間中は一人ですべての受付業務を担うことである。なにかトラブルが発生したり、業務上不明な点があっても誰にも頼ることができない。
最悪、危険を感じたら警察に連絡すればいいし、不明な点があっても退勤時に確認すればなんとかなるので、そこまで気負わないようにしようと思っているのだが、それ以上に厄介な懸念事項がある。それが冒頭に記載したこのラブホテルのルールだ。

なぜ? 双方の同意があるのなら性別は関係ないではないか

「男性2名でのご利用は不可。※女性2名でのご利用は可」

自分の中でこのルールがどうしても腑に落ちないのだ。
なぜ女性2名の利用はよくて男性2名だとダメなのか。双方の同意があるのなら性別は関係ないではないか。
一番つらいのが、男性が2名で来店した際はフロントが「男性同士でのご利用は不可なのでご遠慮ください」とお声がけしなければならないことだ。
お声がけをするとたいていはすぐに退店していただけるが、寂しそうな表情で退店されるお客様の顔を見るたびに胸が締め付けられる。

先輩スタッフに仕事を教わっている最中に男性2人組が来店したので、私は渋々マニュアル通りにお断りをした。そのあと先輩スタッフは「なんで男が2人でラブホテルに来るんだよ」と鼻で笑っていたので、私は「愛し合うからに決まってんだろ馬鹿が!!!!」と心の中で怒鳴り散らしたが、初出勤のペーペーの身なので言い返すことができなかった。

退職理由を説明しても理解してもらえず、変わり者とされるはず

どうにも納得ができず調べてみたところ、そもそもラブホテルは男性同士での利用がNGなところが大半のようだ。時代は令和なのに何故……。
「一見女性っぽくみえても男性の場合があるから、受付時は注意して確認してね。判断できなかったらお声がけしてください」と教わったが、一見判断が難しいお客様に対して、「あなたは女性でしょうか、男性でしょうか」とお声がけしなければならないなんて地獄だ。外見だけで性別をジャッジすることはできないし、そもそもどんな理由があっても他人の性別をこちらがジャッジする権利なんてない。

このコロナ禍でも非常事態宣言などに収入が左右されない仕事に就けたのは大変ありがたいが、自分の信念や考え方に反するこのルールのせいで退職するか悩んでいる。
きっと退職理由を説明しても理解してもらえず、こちらが変わり者だと思われるのは目に見えているだろう。

このエッセイを読んでくださっている全国のラブホテル経営者の皆様、時代は令和です。
どうか心置きなくラブホテルを利用できる方が一人でも増えるよう、ルールを見直していただけないでしょうか。
地方のラブホテルで働く新米フロントスタッフの切実なる想いを、この場を通じてお願い申し上げます。