二十一歳の夏、私は二十一年の人生の中で、初めてショートボブにした。何十センチ切ったのだろうか、初めて、床に沢山の長い髪の毛が落ちていたのを眺めた。


私は昔、引きこもりだった。不登校を経験し、何年も人が怖いと外に出なかった。しかし、時が経ち、やっと大人になって、外で生きられるようになった。
でも、まだまだ幼く、メイクも何も知らないまま、外で懸命に私は生きていた。
そんな私は、ずっと髪型を変えたことがなかった。髪の長さを短くも長くしたこともなかった。ミディアムロング、肩より下に伸びた、楽な長さ。

いつも、少し伸びれば、安めの美容院でカットしてもらった。染めてもらったこともなく、変化なんて加えなかった。
メガネも外すことはできなかった。カラコンなんて入れるのが怖くて想像できなかった。似合わないと決めつけていた。
だって、同じは安心だったから。
今のままが楽だったから。

あの頃、私は自分の容姿に自信がなかった。何をしても、似合わない、可愛くもない女子なんだと諦めていた。
どんな服も、どんなことをしても、私は私に、自信がないまま生きると思っていた。何も変えられないと決めつけていた。

変化のある自分なんて想像できない。でも友達に背中を押されて

ある夏の日、友達と会った時、友達はバッサリと髪の毛を切ってやってきた。
とても可愛くて似合っていた。
そして羨ましかった。
友達は言った。
「夏って暑いからさ、短いと楽なんだよね!おすすめ!」
だから私は言った。
「私には似合わないよ」

変化のある自分が想像できなかった。今と違う自分を知るのが怖かった。だから、いつも、同じで安心していた。
でも友達は言った。
「絶対似合うよ!夏なんだし、ちょうどいいじゃん!そういうきっかけも大事!」
その夜、私は明日朝イチでサロンを予約した。ポチッと予約できてしまった。
次の日美容師さんに言われた。
「バッサリいくなんて、突然どうしたんですかぁ~!」
「な、夏なので……」

そう、私は夏という理由で自分を変えることにしたのだ。
サロンを出る頃には私は、人生で初めての短い長さの髪の毛になった。初めて見る鏡に写る自分は、私をワクワクさせた。
「似合ってますよ~!」
あぁ、やってみなきゃわからないんだな。そう思った。
私が勝手に決めつけて、似合わないなんて言ってた。私は同じことに安心し、逃げて、自分の変化をまだ怖がっていたようだ。新しい自分を知ろうとしなかったようだ。

「夏だから」そんな小さなきっかけで大きく変われた

カラコンを付けて、メガネを外し、生まれ変わった自分は自信が大きく持てた。明るく染めて、新しい自分も発見できた。
自分がこんなに変われるんだと喜ぶことが出来た。
外に出るのがもっと楽しくなった。
オシャレをもっと好きになれた。
友達のあの一言で。
夏という小さなきっかけで、私は新しく生まれ変わることができた。
そして、新しく生まれ変わることが、その後の人生で、もっともっとチャレンジして生きられる自分に繋がった。

この世の中にやってみなきゃわからぬことも、やってみなければ変われぬ自分も多くあると知った。
あの夏、小さなきっかけで大きく変わった自分は、もっと素敵な人生を進むための、とても大きく大切なきっかけだったと思うのだ。