一度でも髪を染めたら大学の推薦は取り消し。窒息しそうな校則の中で…

私が通っていた高校は、県下一と言われるほど厳しかった。
家から歩いて行けるほど近いから。こんな携帯小説の主人公が言いそうな理由で、中学生だった私は進学先を決めた。
我ながら、最良の選択だと思っていた。家から近いから、朝はゆっくり起きて、放課後は夕方下校時刻まで学校の図書館で過ごすことが出来るだろうと思っていたし、実際にそれは叶った。

だが、学校生活は窒息しそうだった。校則がものすごく厳しかったのだ。
ピアス・染髪禁止。携帯の持ち込み禁止、髪を結ぶとかスカート丈とか下着の色……これだけ聞けば、「あー今でもその校則ぐらいあるでしょ」と思うだろう。

だが、私の高校は、一度でも髪を染めたら大学の推薦は取り消し。携帯が見つかったら、奉仕活動をして大勢の先生に認めてもらわないといけない。
当時流行っていたネット上のプロフや掲示板への書き込み、ホームページを作ることさえ禁止。学校側にバレると退学。
情報の授業でHTMLなどを学び、実際にホームページを作ったのにも関わらずだ。

殺伐とした学校内。登校しては熱を出していた

学校側は生徒のことを思って、このような校則を授けたのだろう。
しかし、私は破った際に、生徒個人の人生に多大な影響を与えるペナルティを授け、学校内のことだけでなく、プライベートにも首を突っ込んでくるこの高校の校則がわずらわしく、自分の自由を縛られているみたいで厄介に思えて仕方なかった。

学校内はいつも殺伐としていた。
当然、いじめも横行していて、私は2年生の4月から突然クラスの女子全員に無視されたり、男子に菌回しのターゲットにされることがあった。
毎日、絶対に学校に持って行かなければならないと定められていた重くて教科書とノートが数冊しか入らない学生鞄と、学校指定のサブバックを持って、学校に行っては熱を出す日々が続いた。

確実に何かが変わっている。自分の中でくすぶっていたものが解放された

後にいじめが親にバレ、私は2年の夏休みに別の高校に転校した。
つい昨日、犬の散歩をしていると、私の母校の制服を着た女子高生2人組がおしゃべりをしながら帰っているのを見た。
二人の自転車の荷台には、荷物の入らない重い学生鞄がくくりつけられてはいなかった。
リュックを背負い、私物と思われるバッグを使っていた。

何よりも驚いたのが、2人共色違いの制服を着て、カーディガンを羽織っていたところだ。
私の時代にはカーディガンがなく、冷房や冬の冷気がどんなに寒くても我慢していた。
一度、カーディガンを作ろうという話が生徒会で出たが、あっけなくなくなってしまった。
制服だって、色違いなんかなかった。別にそれはそれで困らなかったけど、2人の女子高生の姿を見て、選択肢が増えたことを知った。
そしたら、自分の中でくすぶっていたものが解放されて、晴れやかな気分になった。

今、ブラック校則を改善しようという動きがあちこちで起こっている。
私の母校がどのようにして、制服の選択肢や鞄などの持ち物の決まりを変えたのかはわからない。
もしかしたら、制服と鞄だけが自由になって、他の校則は何も変わっていないのかもしれない。いじめだって、あるのかもしれない。
だけど、確実に何かが変わっている。2人の姿を見て感じた変化を、心の底から嬉しく思ったのだった。