いつも通り朝の情報番組を流しながら出勤する準備をしていると、『ブラック校則』というワードが耳に入ってきた。高校生のツーブロック禁止や体育授業時の肌着着用禁止など、各学校特有の校則が取り上げられていた。
幼少期から続けていたバトンのレッスンを優先したいのに、部活強制入部という校則に縛られレッスンに遅れていくしかなかった中学時代。「する人いないでしょ」と笑った生徒手帳に書かれた『女子の坊主禁止』。髪を結ばないと体育館から出してもらえない全校集会後の頭髪検査。冬の黒タイツ禁止。雪が降る日は車で通勤する教師をどれだけ恨んだか。
あの時はめんどくさいなと思いながらも当たり前のように受け入れた。
「大人が決めたルールだからしょうがない、先生が言っていることなんだから正しいんだ」と思っていた。
黒染めを命じられた友人。「私は申請だけでよかった」と思っていた
その中でも私が中学高校と6年間苦しめられた校則がある。
『地毛の申告』『パーマ禁止(ストレートパーマも含む)』。
私は強力な天然パーマだ。早起きをしてどんなに頑張ってストレートアイロンで髪を伸ばそうとも、昼頃には元通り。雨の日なんかは学校に着く頃にはアイロンをかけたのが嘘みたいに髪の毛が暴れていた。小学生の時から男子によく「天パ」と馬鹿にされていた。それが悔しくて何度も喧嘩した。
中学生になると『天然パーマや茶髪、地毛申告』が義務付けられた。入学してすぐに地毛が茶色い友人と申告書を提出しに職員室に行った。
友人は翌週までに黒染めして来るように命じられた。染めるのめんどくさいとぼやいてる友人の隣で私は「申請だけでよかった~」と思いながら部活見学に向かった。
怖い女性教師の心無い一言に、せめてもの抵抗をした
3年生になり中学卒業が近づいてきたある日、卒業アルバム用に個人写真を撮った。クラス毎に会議室で順番に撮られていく。
「ほら笑って~」
とカメラマンの後ろで戯ける男子。手鏡を手に、
「変じゃない!?本当に!?大丈夫?」
と前髪を整える女子。私もポニーテールを結び直し、うねりを最小限に抑えるために伸ばした前髪を整えた。皆がそれぞれソワソワしながら自分の順番を待っていた。
前の男子の撮影が終わった。カメラマンの前の椅子に座って背筋を伸ばす。そのままシャッターが切られると思ったら、カメラマンの横に立っていた学年主任の女性教師が近づいてきた。
「この髪どうにかならない?だらしなく見える」
と言いながら私の前髪に櫛を通した。
恥ずかしい……だらしないって言われた………。
しかし、次に湧き上がってきた感情はずっと隠してきた怒りだった。
「好きで天然パーマで生まれたわけじゃないんだよ。どうにかしたいから縮毛矯正かけたいのに、校則で禁止されてるからなんとかできないんだろ。
ワックスで固めてアホ毛が出ないようにしたら、ワックスも禁止されてるって言ったの誰だ。
何本もピンを使ってうねる前髪を止めてたら危ないからハズせと言ったのはどの教師だっけ。この学年主任はわざわざ出した天然パーマの申請書を知らないのか」
声に出して文句を言いたい。でも目の前にいるのは怖いと有名な学年主任だ。怒られたらやだな。
「無理です」
せめてもの抵抗だった。
もっと早く縮毛矯正をしていたら、可能性は広がっていたのかも…
中学卒業式の1週間前に縮毛矯正をかけた。頭皮に悪いと渋っていた母親から「高校生になるし」と許可がおりた。
朝の準備時間が20分以上短くなった。友人たちに「そっちの方がいい」と褒められた。
結ぶと跡になるからと髪の毛を下ろしていると、担任と学年主任に「結べ」と注意された。お年玉をはたいてかけた縮毛矯正を無駄にするわけにはいかない。私は教師を無視した。
あの校則を破ってもっと早く縮毛矯正をしていたら、毎日もっと長く寝ることができた。勉強をする時間が増えたかもしれない。もっと自信を持って人間関係を築けたかもしれない。私の可能性はもっと広がっていたかもしれない。
おかしいルールがあったら、「おかしい」と発信していきたい
「ネイルはグラデーションはいいけどフレンチは禁止」「女性はヒール付きのパンプスでないといけない」など、社会人になってもよく分からない「規則」「ルール」というのに出会ってきた。
私自身『ルールだから』『昔からの決まりだから』という言葉に麻痺して、疑問視しながらもいつの間にか習慣化してしまっているものがいくつもある。ルールなんて支配する側が管理するのを楽にするために作られたものだ。頻繁に見直されることも少ない。
おかしいことに気が付ける、そしておかしいと発信できる、そんな強い人間になりたい。