中学時代、お洒落な服が着たい、お洒落なメイクをしたい! そんな願望を抱えながらも、家族で見せる私の姿は、まるで正反対。服装性も性格もボーイッシュそのものだった。

変わりたいと思いながらも、「いきなり女の子に目覚めるなんて、彼氏でもできたの?」と母親に冷やかされることを恐れて、なかなか挑戦できずにいた。

地味だった私は、自分をよく見せたいと思い「高校デビュー」をした

私には、信頼できる親友がいた。中年生の時に初めてできた友達と呼べる相手。可愛い顔立ちと、女の子らしい性格、とにかく異性によくモテた。どう見ても不釣り合いな私たちを、周囲のクラスメイトは、「なんで二人が友達に?」そんな目で、見ていた気がする。

人と話すことが苦手で、見た目も性格も地味な自分とは、正反対な女の子と、あることをきっかけに私は親友になれたんだ。そして、高校も一緒に進学した。

高校1年の春。可愛いくてイケてる、いわゆる1軍女子=異性にもモテる! と思いこんでいた私は、少しでも自分をよく見せたい! そんな願望から、少しだけ勇気を出して眉毛を剃って、ストパーをかけて、キャラも明るく変えてみて、“高校デビュー”した。

元女子高だった高校は、圧倒的に女子が多く、可愛い女子がいっぱいいた。眉を剃ったり、ストパーをかけるたりするだけでは、1軍のみんなに追いつくのは難しかったなぁ。

親友とは、クラスは違ったけど、毎日一緒に登校した。親友は、やっぱり高校でも可愛いとよく噂されていた。私の自慢の親友だった。そして、高校生らしいメイクで可愛さに更に磨きをかけていた。

私は、高校デビューの効果があったのか、それとも、いつも隣にいる親友のおかげなのかわからないが、夏休みに入る前、「可愛い子がいる!」と他の学科の女子たちが、噂して私を見に来てくれることがあった。暗黒の中学時代には、ありえないことだったから、可愛いって噂されることを奇跡に感じたし、もっとかわいいって言われたい気持ちが高まった。

そして、欲はどんどん増した。自分がどうこうより、圧倒的に“見られ方”を気にするようになっていった。振り返ってみると、自分が変わるきっかけは、本当に突然現れるものだなぁと今更感じる。

可愛い親友に勇気を出して「化粧の仕方教えてよ!」と相談した

高校1年の夏休み、「化粧の仕方教えてよ!」と、勇気を出して親友に相談した。親友は「もちろん!」と言ってくれた。そして、わくわくキラキラな私たちの夏は始まった。

地元のデパートの小さな化粧品コーナーだったけど、初めての化粧品コーナーにとてもわくわく胸が躍った。“女の子を楽しむ感覚”を初めて心から感じた気がする。何を買えばいいかわからなかったけど、教えてもらいながら、下地にクリーム、ファンデ、アイシャドウ、アイライナー、口紅を頑張って貯めたバイト代で、一気にすべてを手に入れた。「目元は、ブラウンが人気だよ」と、親友にアドバイスしてもらいながら選ぶ時間、楽しかったなぁ。プチプラのコスメだったけど、すごく心が躍った。

初めてのメイクは、親友にしてもらった。「はい!できた~すごい!似合ってる!」と親友の声と共に顔を上げると、まるでパンダのようにくっきりなアイラインだったけど(当時は、パンダメイクが流行っていた)、“メイクをしている自分”を初めて見て、新しい自分に生まれ変わった気分だった。

そこから私は、一気におしゃれに目覚めた。バイト代は、全て美容室や洋服代に費やした。自分の家庭は、好きな物を何でも買ってくれるような家庭ではなかったから、洋服1着買うにしても、必ずセール品か1,500円以下の商品。自分で稼いだお金で、買いたいものを自由に買えることにも、喜びを感じていたし、更に働くことの楽しさを、高校生1年生で経験できたなぁ。

だけど、やっぱり家族には、気づかれたくなかった。家に親がいないことをみはからってこっそりメイクしたり、わざわざ駅のトイレでメイクしたり着替えたりしていたなぁ。ばれないようにこっそりと、なかなかスリルな日々を送っていた気がする。当時は、YouTubeも普及していなかったから、雑誌を見ながら、親友の部屋でよくメイクの研究をしたなぁ。

メイクには「人生」を変える力や、見せる力で「見える世界」も変わる

時は過ぎ、いつの間にか私は、“可愛い女の子”として見られるようになっていた。可愛い女子に、他校の男友達を紹介されることも増えた。それと同時に、私の心は常に満たされて、外見が変わると、自分自身の性格や心が変化していくことにも次第に気づいていった。

自分に自信がついてきたからか、気持ちに余裕が出てきて、人に対して無意識に親切したり、優しくしたりできるようになっていた。気づけば、自分の周りは、いつも笑顔であふれていたし、色んな人が集まってくるようになった。

暗い女の子から、私は自然と明るい女の子に変身していたみたい。本当にメイクは人の人生を変えるし、見せる力で、見える世界も変わるなぁと実感しているところ。皆にとっての小さな一歩も、私にとっては、すごく大きいもので、とても恥ずかしかったけど、「メイク教えてよ!」ってあの夏、勇気を出して挑戦してよかったなぁ。

今でも、髪を巻くこと、可愛い服を着ること、ランニングするときだってメイクをすること、とっても大切にしている。メイクが、自分に自信をつけてくれて、色んな人とのご縁をつなげてくれたし、毎日を明るく楽しくしてくれることを実感しているから。

そして、弱みを隠せる唯一無二の武器。女性がメイクをする裏側には必ず「変わりたいとか、良く見せたい」って気持ちがきっと隠れていて、努力の現れなのだと思う。メイクを通して広がっていく世界には、本当驚かされる。

中学生の頃は、こんな顔に生まれてきたのは、親のせいだ! ってずっと恨んできたけど、自分が変わろうとしなかったからだって気づけた。人の人生が変わる理由、変われる理由は、変われない理由は、今日も明日もあちらこちらに転がっている。

きっかけに気づくか、気づかないか、きっかけを拾うか、拾わないかは自分次第だって思いながら今日も生きていく。あの夏よ、ありがとう。