日本で“女子力”、という言葉が使われるようになったのはいつからだろうか。

ほぼ10年前、私が女子校の高校生だった時には、「私たち女子力ないから終わってる~」なんて会話をしていたので、その頃にはすでに当たり前に使われる言葉になっていたんだろう。

「女子力とは?」と考えると、決まった定義なんてないんだなと思う

女子力の高さ低さ、あるなしは、自分だけではなく他の人からも。休日にお菓子を作ったと言えば、「女子力あるね」と言われ、女子マネージャーと女子選手のいるサークルの飲み会では「マネージャーは可愛いけど、お前らはほんとに女子力ないよな」と言われ、ちょっと目の調子が悪いので眼鏡に変えたら職場の人に「今日は女子力低いね」と言われ。

日常的に私たちは、女子力が高いか低いかを、今日の天気くらいのノリで使っている。女子力と言っとけば、なんとかなるという風潮があるような気もする。可愛い、美人と思うこと、もしくは褒めたい、良い印象と伝えたいという照れを、女子力と変換しているのではないかと思ったりする。

可愛い、優しい、癒し系、料理ができる、おしゃれ、メイクが上手、気遣いができる、モテる、趣味が女性らしい、ワンピースを着ている……女子力とはなんぞや? と考えると、ほんとうに決まった定義なんてないんだなと思う。なんとなく、女子力という言葉が使いやすいだけ。

例えばだけれど、もしも男子力という言葉があったとしたら。ジムに通い始めたという男性に「男子力が上がったじゃん」と言ったり、飲み会で「外資で働いている○○くんは男子力高いけど、△△くんたちはほんと男子力ないよね」と言ったり、髭を剃らずに出勤してきた男性に「男子力が低いね」と言ったり。とても失礼というか、下品な会話になると想像する。

「女子力」に日常的に触れているが、ある広告を電車の中で見かけた

でも、私たちは女子力という言葉に日常的に触れているし、なんなら女子力という言葉を使いこなした自虐にも慣れ切っている。

今日の天気くらいのノリで、“女子力の高さを褒める”男性や、“女子力が低いとからかう、またはマウントをとる”人は、私が、今日の天気くらいのノリで、「わー、ありがとうございます」とか、「そうですね、最近忙しくって」とか、適当に返事をしていることに気づいているだろうか。

そんななか、“Girl Power”という広告を電車の中で見かけた。女子力を英語でかっこよく変換して表現してみたのかと思ったが、興味を持って調べてみたら、どうも違うらしい。

辞書には「女性は自分の好きなように生きるべきという考え方で、女性の社会『政治』的影響力」と記載されていた。

Girl Powerとは、自分のパワーを使って、何か行動を起こすこと。女性の自立を促すきっかけになるもの。自分を奮い立たせるもの。おしとやかにつつましくという殻を破り、自分の意見をはっきり言えること。

Girl Powerは自分を外に向けて発信し社会を変えていく力

いわゆる女子力とは、全然違う。むしろ、女子力という言葉で縛られている、女性はこうであるべきというしがらみを振り払って、自分が何をしたいのか、自分を外に向けて発信し、社会を変えていく力。

あの広告が、女子力をGirl Powerと言い換えて、目につきやすいようにしたのか、それとも本当の意味でGirl Powerを意図したものだったのかは、詳細を覚えていない今となってはわからない。でも、私にGirl Powerという言葉を知るきっかけを与えてくれた。

女子力は、今日の天気くらいのノリの他者とのコミュニケーション、Girl Powerは自分のなかに秘めた、野望だと思うようにした。

女子力をただ英訳してしまえばGirl Powerになってしまうから、言葉のニュアンス、意訳は難しいと思いながら、本当のGirl Powerが、もっと日本で広まってほしいと思う。

参考文献 girl powerの意味 小学館プログレッシブ英和中辞典
https://dictionary.goo.ne.jp/word/en/girl+power/

海外女性の「ガールズパワー」と女子力とはどう違う?
https://sandalphon-journal.com/articles/14038348940