あれは数年前、私が大学3年生の頃の、ある平日の深夜0時過ぎ。明日も1限から授業があるし、そろそろ寝ようと思って寝床についた。ウトウトと意識が遠のいてきた一番心地よいタイミングで、LINEの通知音が何度も鳴った。

画面には、私以外のクラスメイトの集合写真。一気に目が覚めた

画面を見ると、大学のクラスの女子のグループLINEに、「〇〇が写真を送信しました」と何件も通知が連なっていた。開いてみると、ついさっき誕生日を迎えたばかりの子の家に、サプライズで何人かで行って祝っているようだ。

私は眠い目をこすりながら写真をよく見た。何人で集まってるんだ?あれ……?
一気に目が覚めた。クラスの女子11人のうち、私以外の10人がそれらの写真に写っていた。私だけ、呼ばれていなかった。

私が通っていたのは人数の少ない学科で、約20人のクラスで男女比は半々。高校のクラスよりも小さい規模で、4年間でもちろんクラス替えもない。入学したときに、クラスの雰囲気は騒がしく、みんなわいわいするのが好きそうな印象だった。

私は騒ぐのはあまり好きではないため、自分と気の合う人はいなさそうだとなんとなく感じた。それでも、出身地が割と近く、クラスの中では「おとなしい女子」とされているYとEと3人で行動することが多く、仲良くしてもらった。

クラスの垣根を越えた授業もあったが、ほとんどの授業はクラス単位で行われた。2人がいなかったら、私はひとりぼっちだっただろう。
4年生になれば、就活やインターンなどがあるため、クラスで行動することは少なくなる。クラス全体の雰囲気への馴染めなさも、あと少し我慢すればいいだけ。このまま、それなりに、穏やかに過ごせればよかったのに。

大学での人間関係は諦めていたつもりなのに、涙が止まらなかった

グループLINEに送信された、みんなの笑顔。YもEも含めたみんなは、私がいないことに気付いているのだろうか。
大学での人間関係は諦めていたし、自分から一線を引いていたつもりだった。私はあの子たちとは違う。馴染めない。なのに、涙が止まらなかった。

YもEも、クラスのみんなと騒ぐよりは、静かに過ごす私側の人たちだと思っていた。そんな2人が、みんなと深夜に楽しそうにしている。私は1人、暗い部屋の布団の中で、みんなの写真を見ていた。目は完全に覚めていた。

次の日学校へ行くと、「やばーい、寝不足だよ」などと、みんな楽しそうにしていた。YもEも、深夜にあったことには何も触れず、私と接した。私も、何もなかったように過ごした。

早く卒業したい。せめて、早く4年生になりたい。ただただそれだけを思って過ごした。

一緒にいた友達にあの日の辛さを告白。もう責めるつもりはなかった

そして、待ちに待った卒業式が終わった。
どんな感情を持っていても、「卒業」という響きはなんだか寂しい気分にさせるものだなあと感じた。あの日のことはあったけど、YとEがいなかったら私は完全にひとりぼっちだったはずだから、謝恩会のあとに3人で話したとき、私は大泣きしながら2人に感謝を伝えた。

卒業から数日経ち、ちょっとセンチメンタルな気分になって、YとEとのグループLINEで大学4年間を振り返った。
私は正直に、私だけ呼ばれなかったあの日の辛かった思いを伝えた。

2人からの返事の文面は忘れてしまったが、2人は、私にもみんなから連絡が来ているものと思っていたようだった。

集まったら私だけいない。でも、その場でそれを言い出すことができなかった。私と同じように、2人はあの日のことを気にしていて、私に謝った。
私はもう何も責めるつもりはなかった。許せたのは大学生活からの解放感があったからかもしれない。でもそれ以前に私は、私が思っていたよりも2人のことが好きだったのだと思う。

大学を卒業してから4年が経った。今でもYとEとは仲良くしている。予定が合わなかったり、コロナウイルスの影響もあったり、卒業してから3人で会ったのは2回だけ。大学のクラスの中に押し込められているときよりも、3人で過ごす時間は楽しいものだった。

大学生のときは、ひとりぼっちになりたくなくてYとEと行動していた、と思っていた。
でも今は、2人とずっと仲良くしていきたいと思っている。