仲の悪い友人の間に挟まれ、少しだけ寝込んだ

大学最後の日、卒業式。
私は裏切られた。

大学1年生の時からニコイチしていた同じ学科の友人Yと、同じく仲の良かった違う学科の友人Mと。この2人それぞれと卒業式一緒に出ようねと話していた。

ただ、私には不安があった。この2人は仲があまり良くないのだ。

本当はもう1人違う学科の仲のいい友人Nがいて、Nが発端となりサークルを立ち上げた。それが1年生の時だ。
私たちは学食のテーブルで顔を突き合わせながら立ち上げの書類を作り、メンバーを集めようと画策した。代表は私、副代表はN、会計がY。幸いにも入学して1月、無事にメンバーが集まりサークルは設立。絵に描いたような輝く大学生活の始まりだった。

夏が過ぎたころ、Yがプライベートの問題で精神的に不調となった。同じ学科の私は話を聞いたし、笑ったり慰めたりしつつ彼女の平穏を祈った。違う学科ということでMやNと顔を合わせる機会はYほど多くない。共通科目やサークルの時、この時はまだ一緒に昼ごはんを食べていたかな。
祈りも虚しく、Yの不調は冬まで続いた。後期に入り共通科目が減ったことでMやNと話す機会はどんどん減っていく。Nに至っては講義に顔を出さない時すらあった。

そんな時、Mから私はこう言われる。
「なんでYとおるん?嫌なんやけど」

Mはプライベートでの問題についてばかり話すYに愛想を尽かしていた。ここからMはYと関わろうとしなくなり、Yもそれを察して微妙な距離感になる。私は間に挟まれて、曖昧に笑っていた。しんどいな、と思って私は少しだけ寝込んだ。

卒業式の前日、そして朝、2人からのメッセージが…

次の年、Nが1年ほど海外に留学に出た。1年ズレたNは卒業式には出られない。
サークルでもいろいろあったけれど、私はYともMとも良き友人として付き合ってきた。
どちらも楽しい友人である。それに繋がる感情が良いものとは言えなくても大学生ともなればそれなりに付き合っていけるもので、私を挟んでYと Mも絶妙な距離でお互いと付き合っていた。
挟まれている私は気が気じゃなかったけれど。

雪解けは来ないまま4年があっという間に過ぎて、卒業式が明日に迫ってきた。Nもお世話になった人達に会いに顔を出すそうだ。私の不安は1つだけ。YとMの間に明日も上手にいられるだろうか。

ピロン、とLINEの通知がくる。Yからである。
「ごめん、なんか私指定席らしいわ。前の方」
んんんん???まあMがいるしな、と思って、
「カメラ構えとくからね!」
と返信する。

次の日、Mにそっと耳打ちされた。
「私指定席らしいんよね。なんなんやろ」
んんんんんんんんん???
唐突にひとりぼっち確定である。いや、適当に誰かと座るけれど。
私はNに泣きついた。
「どうせバレないから一緒に座ろ!?」
当日の朝、Nから一言。
「ごめん間に合わんわ」
裏切りである。

あなたたちのおかげで、私の大学生活はめちゃくちゃに楽しかった

これは裏切りだ、と思いながら悶々と1人で座る卒業式。後ろの席に座る同じ学科の子と話しながら、式に参加する。

目の前の壇上では、成績優秀者として登壇したYと、 ボランティアで功績を残したMが表彰されている。なんだかとても誇らしい気持ちだった。
指定席同士は近い席だった。談笑している彼女達を見たのが1番嬉しかった。腹の底なんて知らない。大学生を笑って終わることができることは素晴らしいことだ。私の素晴らしい友人達をみんなに自慢したい気分だった。

式が終わり、それぞれのゼミに行くため一旦解散してもう一度集まる。Nも加わった4人で撮った写真は映えてなんかないし、私は半目だったけれど、きっとずっと消せないだろう。
あなた達に会えてよかった。おかげで私の大学生活はめちゃくちゃに楽しかった。
あなた達が心を許し合う日は来ないかもしれないし、来るかもしれないけれど、それでも私はあなた達と会えてよかったし、どちらともずっと付き合ってこれてよかった。

私はまだ、彼女達に手紙やLINEで連絡をとっている。YとMはきっと連絡をとっていないけれど、きっとまた集まって笑えるような気がしている。
そんな素晴らしい「裏切り」を私は夢見ている。