昔から引き運が悪い。
これを引き運が悪いと表すか、見る目がないと表すか悩ましいところだが、なんせ男運がない。

初めて彼氏ができたのは中学生の頃。
志望校が同じだった彼とは日々切磋琢磨しながら、同じ目標に向かって頑張った。
努力の甲斐あって、2人揃って同じ高校に進学し、甘い青春時代を送った。
そんな幸せな時間も、冷やかされるのに飽きたというなんとも高校生らしい理由で終わりを迎え、その彼は今では公務員マイホーム持ちの二児の父になっている。
今思えば、これが人生のピークだったのかもしれない。

不審者が家に入り、彼に電話。非常識な電話は迷惑と彼からメッセージ

時は進み、大学進学と共に出来た彼氏は見た目よし喋りよし、本人も女好きときた。
自慢の彼氏である反面、不安は日々付き纏い、案の定同じサークル内の友人と二股をかけられ、フードコート内8時間ほどの時間は修羅場と化した。
その一年後、今度は友人が別の男の子と二股をかけ、「この気持ちわかってくれるのは君しかいなくて」と、電話をかけてくるなんとも情けない始末だ。

その後出来た、家から10分ほどの距離に住む彼氏と付き合いはじめて1年ほどたったある日、一人暮らしをする私の家に不審者が入った。
目を覚ますと私の上に知らない男。

思わず大声をあげると、男は逃げていったが、鍵は壊されブレーカーは落とされ、恐怖心でいっぱいの私は迎えに来て欲しいと彼に電話をかけたが、深夜2時、さすがに出ない。

留守電を残し、ようやく連絡がついた友人の家で眠れず朝を迎えると、目を覚ました彼からのメッセージは労りでも謝罪でもなく、「そんな非常識な時間に電話されるの迷惑、別れよう」だった。
不審者に入られた心的ダメージで彼について何か思う余裕がなかったが、今思い返すとなんともひどい話だ。

更に時は経ち、社会人になった私は同じ会社の彼と同棲を始めた。
穏やかで人当たりもよく、親受けも上司受けも友人受けも抜群、生活力もあり、非の付け所のない100点満点の彼だった。

3年記念日を目前に今か今かとプロポーズを待っていた私に、彼は突然家を出ていってほしいと言った。

訳もわからず涙ながらに荷物をまとめ、慣れ親しんだ部屋を後にした次の日、共通の女上司のインスタに"今日から同棲開始"というコメント共に、私が昨日去ったばかりの家の写真が。

「!???」
頭の中がパニックを起こす中、ようやく彼が二股をかけ、私が出た次の日に新しい彼女を迎え入れたのだと理解した。

悪夢が始まった。次に選んだ彼もやはりとんでもなかった

そこからは悪夢の始まりだった。
アプリで知り合った自称社長の男性からは、流行りの仮想通貨の素晴らしさを熱弁され、適当に聞き流していると君のことを気に入ったと、何故か付き合ってもいないのに一緒に住みたいとタワーマンションの物件候補が送られてくるようになった。

次に会った男性には、私が好きだと言った歌手の歌詞を毎日贈られた挙句、1日1文字ずつ
"き"、"み"、"の"と送られ、面白半分に放っておくと約1ヶ月ほどで「君のことが好きだ 言いたいことがあるならなんでも言ってくれ」という文章が完成した。

そんな中ようやく彼氏に選んだ人は、付き合った瞬間激重女々しいボーイに変身し、おはよう、今日も君がいる世界に生きられて素晴らしいうんたらかんたらと、外人かと突っ込みたくなるような文章を毎日送ってくるようになった。

しかも1日一度ではない。起床後・お昼休憩・就寝前の3回だ。
さすがに耐えきれなくなった私が別れを切り出すと、笑っちゃうぐらいの長文が大量にピコピコと送られて来て、朝になって開封すると、そこにはメッセージを取り消しましたと言う文章が10行ほど並んでいた。

その後付き合った彼も、たくさんの愛情は注いでくれたが、ある日突然連絡が途絶えたかと思えば、クスリがばれて刑務所に入ったのだと、人づてに聞いた。

ついに犯罪者の彼女になってしまったか~なんておもいながら、次に選んだ彼もやはりとんでもなく、時はコロナ禍。隣県に住む彼の家に訪れた私を、玄関先でちょっと待ってと彼は止めた。そして真顔で除菌スプレーを取り出し、私の頭の上から足の先まで振りかけたのだ。

怒りより、悲しさより、疑問でいっぱいのあの時の私の顔は、なかなか滑稽だったと思う。
私はバイキンなのか?なぜ人にそんなことが出来るのか?
そもそもそんなに嫌なら会わなきゃよかったのでは?
言いたいことを喉の奥にしまい、共に1日を過ごしたが、当の本人はコンビニへ行くのにもマスクはせず、あれだけバイキン扱いした私の体は求めてくるのだ。

1人の方が楽だと気づいた。当分誰かと恋をする気になれない

そんな痛い思いをし続けて10年。
ようやく気づいた。

1人の方が楽だ。
1人でいれば傷つけられることもなければ、不快な気分にさせられることもない。
たまに寂しさを感じることはあっても、誰かに与えられるストレスに比べたらなんてことはない。

持って生まれた才能か、引き運か、自分の見る目のなさを自覚した今、当分誰かと恋をする気になれない。