「生理って下痢と同じように、量をある程度制御できるの?」
彼氏がこう言ったとき、頭が真っ白になった。
生理を理解していると思っていた彼氏から飛び出したまさかの発言
生理の制御?
無理!
ビデオ電話中、今日は生理の血が多いから特に元気がない、という私の言葉に対する質問だった。
生理の理解に対する男女差の象徴みたいなことを、まさか自分の彼氏が口走るなんて!
私の彼氏は生理のことを正確に知っていると思ったのに、どうしてこうなった。
ああ彼氏よ、妹がいる彼氏よ。
生理中、女性はナプキンを使っているうえ、頭痛や腹痛でしんどいから薬や湯たんぽを使うということも頭に入っている人なのに。
生理中って大変だねえ、無理しないでと気遣ってくれる優しい彼氏なのに。
確実に避妊したいからピル買って、と言ったらピル代を出してくれた彼氏なのに!
「そういうお前は怪我から流れる血を意識的に制御できるんか?」
ピンぼけしすぎな彼氏の質問に、思わず荒い言葉が飛び出る。
「それは無理」
「つまりはそういうことだよ、生理は出血だから量の制御なんてできないんだって」
生理の正体は、ホルモンバランスの変化によって子宮内膜がはがれることによる出血だ、と生理が文字通り生理現象であることを説明した結果。
「だからずっとナプキン使うんだ」
ちょっと理解してくれたのかな?とほっこりした時。
「今月は5日から1週間くらい生理だからお泊まりデートはやめた方がいい、って言ってくれるから、生理って下痢と同じようにある程度制御できるものだと思ってた」
純粋な疑問を彼氏に投げた「どうして生理の仕組みを知らないの?」
彼氏よ。そこからか。
「生理って周期があるから、日付を数えたら次の生理がいつ起きるかわかるだけなんだってば! しかもズレることもあるし、ほら、今日生理中だけど1日じゃん」
人間、あきれ果てると言葉を失うのではなく、かえって口数が多くなると私は学んだ。
具体的な日付で彼氏は生理が制御できないと納得していた。
知らないだけで、悪気がある人ではない。彼氏は。
だからこそ、気になってしまうことがある。
「というかさ、妹もいるしピル買ってくれるのになんで生理の仕組みを知らんのん……?」
純粋に疑問だった。
私と付き合う前からナプキンの存在を知っているようなのに、どうしてナプキンが必要になる現象の仕組みを知らないのか。
「だって学校じゃ教えてくれなかったし、女の子に聞くのも、デリカシーがない質問だから聞きづらかった」
本気で申し訳なさそうにしている彼。
「優しいから女の子のことを気遣って、逆に知る機会がなかったパターンか…….」
事情を聞くと、知らないことを責められない。性教育に関する疑問
そう。彼氏は、約3000円するピルを「私のことが大事」だから買っている。
女性を性別を理由に馬鹿にしたり、どうでもいいと軽んじている男性ではないのだ。
女性は大事にするもの、と考えている彼氏が、生理を正確に知らない理由は、しんどい時の話を男性の自分ににすることで女性につらい思いをさせたくない、という彼氏なりの思いやりが空回った結果であった。
なんてこったい。
生理の量を制御できるんでしょ、というとんでもない発言を聞いた時は、無理解なセクハラ彼氏に怒りしか湧いてこなかった。
今まで大事にしてもらった分、生理に対するあまりの無知さに裏切られたかのような寒々しさに打ちのめされた。
でも、事情を聞くと、彼氏を責めることはできなかった。
生理は、女性にしか起きないからこそ男性に話しづらい。
男性も、女性にしか起きない現象ゆえに生理について女性に聞きづらい。
だからこそ、男性に生理の存在を隠すのではなく学校で教えるべきなのでは?
生理は血が垂れ流しになるもので、周期を予測できても量を制御することはできないと初めて知った23歳彼氏のしゅんとした顔に、学校の性教育に対する疑問が湧いてきたのだった。