約6年と9か月。
これはなんと、初潮から閉経までを約40年とした時の、一生の生理期間の合計だそうだ。
一生のうち約7年もの間、ほぼ制御不能な状態で股の間から血がだらだら流れていると考えると、なかなかインパクトのある数字である。

女性として生きる大人として、子供たちに伝えておきたい

これを学んだのは、勤め先の小学校の保健の授業だった。約30名の女子児童といっしょに観た、ユニ・チャームが制作した思春期の身体の発達についてのビデオの中で、そう言っていた。
彼女たちは5年生で、年齢で言うと大半が10歳。まだ初潮を迎えていない子がほとんどだと思う。だから、冒頭の約6年9か月という数字が画面に映し出された時、教室にいた人の中で一番びっくりしていたのは私自身であったと思う。
彼女たちはまだ生理というものを体験していないのに加えて、約7年という時間の重みにもあまりピンときていなかったようだった。

あの、毎月やってくるだけでなく、くる前にもメンタルをボコボコにしてくる、なんともやっかいな存在である、生理。
それを、この目の前にいる30名もの児童たちは、まだ知らないのだ、と思うと、当たり前のことなのに、なんとも形容し難い不思議な感覚に襲われた。
そして、その不思議な感覚は、私がこの子たちの年齢だった時、生理について大人が教えてくれればよかったのになあと思うこと、そして、一介の女性として生きる大人として、今私が彼女たちに伝えておきたいと思うことについて、考えてみるきっかけとなった。

以下が、私の考える「10歳の時に生理について知っておきたかった3つのこと」である。

ただし、本題に入る前に一つだけ断っておきたい。
私は生理がこれまで一応規則正しくやってくるほうだったし、仕事を休まなければならないほど酷い生理痛に悩まされたこともない。また、経済的に生理用品が手に入らないといった経験をしたこともない。そして、世の中には、そういったことで苦しんでいる人たちが大勢いることも知識としては理解しているつもりである。
そういう方々が、不快な思いをされないよう、「これが普通」という断定的な表現は避けたつもりだが、そういう気持ちにさせてしまっていたらすみません。

PMSの眠気、イライラともっと早く向き合えていたら

ひとつめは「PMS」のこと。
PMS(月経前症候群)という言葉を、小学校のうちに教えてくれていたらどれだけ助けられただろう。
経験として、生理前にお腹が痛くなったり、気分が落ち込んだりすることは、生理を重ねるにつれて少しずつ学んでいったけれど、それにPMSという名前がついていて、皆も同じような経験をしているということを知ったのは大学生活も後半に差し掛かってからだった。

最近は、生理に関する会話も少し前とは比べものにならないほどオープンになってきて、生理休暇を取る、取らないの議論も聞かれるようになった(実際の取得率はさておき)。
そういった時代背景も含めて、生理というのは、ただ単に血が流れる現象ではなく、その期間の前後も、肉体的にも、精神的にも、大きく変化する現象だということを、知っておきたかった。
そうすれば、止まらない眠気とも、イライラとも、もう少し早い時期から冷静に向き合うことができただろう。

使い心地、パッケージ、素材、いろいろな生理用品がある

ふたつめは、生理用品を選ぶのはけっこう楽しい、ということ。
「生理の貧困」という言葉が聞かれるようになり、またニュースではスコットランドやニュージーランドで生理用品の無料配布が行われるようになるといった話も聞かれる。そういった社会的な議論もあるのは重々承知の上でのこの話である。

私は個人的に、自分に合った生理用品を選ぶのは楽しいと思う。使い心地や、パッケージや、素材など、今はドラッグストアに行くと様々な種類が売られている。
これは、アメリカに留学しているときも同じだった。アメリカのドラッグストアには、日本では見られないような、一見生理用品には見えない、モノクロのスタイリッシュなパッケージに包まれたナプキンやタンポンが並んでいて、いろいろと楽しみながら試したものである。
日本に帰って来てからここ数年は、オーガニックコットンの製品を使っていたが、最近では、蜷川実花さんとエリスコンパクトガードがコラボした製品を買ってみた。憂鬱な生理期間を楽しくしてくれそうなパッケージで、使うのが楽しみだ。
夜用のナプキンも様々な種類があるということも、初めのうちはあまり知らなかった。がっちりガードしてくれる、寝返りも安心なナプキンという選択肢があることを知っておきたかった。

だから私は、これから生理を迎える子ども達に、実際にいろいろなナプキンを見せてあげて、こんなオプションがあるんだよ、ということを教えてあげたい。

生理は悪いことばかりではない。セルフケアのきっかけになる

三つ目は、生理はがんばりすぎる人への「がんばらなくてもいいよ」というリマインダーになるということ。
生理はどんなに健康管理を気をつけていようとやってくるものである。だから、私は憂鬱な生理期間を逆手にとって、「無理をしない、がんばりすぎないリマインダー」として、使っている。

もちろん私たちは、毎日、仕事に、趣味に、恋愛に、忙しい日々を送っている。でも、人生で起こることは全てコントロールできるものばかりではないのだ。
生理が来そうだなと思ったら、いったんアクセルを踏んでいた足を緩めて、体を温める。休める。生理痛がひどかったら、整体に行って体の歪みを整えてもらったり、鍼を打ってもらったりして、セルフケアをする。不安な症状があれば、時間を惜しまず、病院にも行って自分の体を労る。
生理は、こういったセルフケアのきっかけにもなる。悪いことばかりではないのだ。
生理のおかげで、たまには休んだっていいんだよ、と自分に言ってあげることができるのである。

生理って、めんどくさいけど、でも、大事な自分の体が一生懸命動いてくれている証拠。だから、無理せず、体を労って、楽しめるところは楽しんじゃおう。
これが、今私が10歳の少女たちに伝えたいメッセージである。