先生！新しいカリキュラムに悩んでるんですよね？
大人になった女子高生経験者として提案があります。
お化粧を必修化するなんてどうでしょう。10代後半の女の子、つまり社会に出る直前の女の子にとって、絶対に必要なものじゃないですか。

高らかに挙手をして伝えたい。化粧初級講座を授業に入れてほしい

国語で習う文学は心を救うし、現代社会は環境問題を考える一歩目になるし、数学はほら、なんだろう、買い物の時に使えるし！（微分積分やベクトルって、普通の生活に役立つの？なんて口が裂けても言いません、ごめんなさい）

それらの科目と同様に、「化粧初級講座」なんてどうですか？
え？男女平等の観点？いや～それを出されてしまうと……。
家庭科の中で選択授業にするとかは？だめ？

高らかに挙手して架空の職員室で提言している自分を妄想をする。
これは今は妄想だけど、本当にあってほしいことだと思っているのは、私だけじゃないんじゃない？

義務教育の6年間を良い成績でこなして、3年間の高校生活では努力を重ねて勉強し、国立大学に受かった。
でも、合格通知を受け取った瞬間までは高々だった自分の世間知らずのお鼻は、新入生オリエンテーションでぽきりと折られたわけです。

大学で出会った女の子たちは、ちゃんとメイクの勉強をしていたのだ

私は圧倒的に可愛くなかった。
周りの女の子たちは、どこで覚えたのか、ちゃんとメイクをしていた。
いや、私も、申し訳程度にはしていた。適当にガリガリ引いてみたアイブロウとか、ガタガタのアイラインとか。

まあこの程度でいいでしょ、メイクはマナーらしいし、塗ってりゃマナー違反にはならんだろと。勉強しか知らない高校生でも、メイクがマナーということくらいは知っていたし。

甘かった。
大学で出会った女の子たちは、私が学校のお勉強だけをガリガリこなしている間に、ちゃんとメイクの勉強をしていたのだ。
自然に見える眉毛に、まっすぐ引かれたアイラインに、くるりと上を向いたまつげ。
いやいや、高校ってメイク禁止じゃなかったの！？いつの間に！？なんて間抜けな顔で聞いてみた。

もちろん禁止だったけど、家で研究するでしょ、だそうです。まじか。
途方に暮れる18歳の春。そんなの学校で習ってないよ～って。
中学も高校もほとんど成績はオール5。それが自慢になったのは、18歳まででした。私、学校の勉強しかできなかったわけです。社会に出る準備か何もできていなかったわけです。

あー、こんなの、学校で教えといてよー！
何人もの恩師の顔を思い浮かべては、途方に暮れていた。

勉強ができる優等生から世間知らずのダサい女子に転落する辛さ

仕方がないから、雑誌とかウェブサイトとかで独学で勉強を始めてからはや10年。
今では社会に出ているわけで、まあそれなりに、下手だね、とは言われない程度にメイクは上達したけれども。
大人たちの手で安全に引かれたレールの上を、健全に従順に歩いていると、マナーとか不文律とかに疎い18歳が生まれてしまうの、納得いかない。

「勉強ができる優等生」から、「世間知らずのダサい女子」に一気に転落する辛さ。
先生！可愛い教え子が、先生たちに教わった通りに勉強し続けていたら、急に「世間知らず」になってましたよ？どう思ってるんですか？え？勉強はできてたから偉いよ、って？そうかなあ、えへへへ……なんて笑顔になれるはずありません！

社会で必要なら、きちんと教えといてください！
え？なんでメイクが社会で必要かを論理的に説明できないから、学校で教えるのはダメだって？ああまあ確かに……。
先生！じゃあ私みたいな「世間知らずのダサい女子」は、何をどこから勉強したらいいんですか？

社会における化粧の重要性からですか？それは現代社会のカテゴリーじゃないんですか？
じゃあ先生！高校の現代社会の授業の中で、女子のメイクの重要性を教えておいてください！ああでもそれは男女平等的に良くないんでしたっけ……。
八方塞がりじゃないですか。

全国の優等生の女子高生へ。
国語と数学と英語と化粧は、勉強したほうがいいよ。
かつての「世間知らずのダサい女子」より。