「子宮内膜症ですね。薬で生理を止めましょう」と医師からそう告げられた時、心底安堵した。これまで漠然と感じていた「生理が重い」にお墨付きがもらえたのだ。
勘違いではない。仮病でもない。そう判定されたこと、それを証明できることでどれだけ肩の荷が降りるか、生理がつらくない人には分からないだろう。
生理初日から3日目にかけて、重い月は「迷走神経反射」に悩まされた
初潮を迎えてから、世界は一変した。同級生の中で、初潮を迎えた女だけのコミュニティが発生した。それまで仲がよかったわけでもないのに、仲間として迎えられ、公然の秘密を抱えるようになったのだ。
休み時間になるたびナプキンを替えにトイレへ向かう私に、同級生は「そんなに替えるの?」と聞きながらついてきた。思えば、当時から私は生理が重かったのだと思う。
自分の経血量が多いことを知ったのは、高校生の時だった。保健体育の教科書の「生理の日数 平均5日」の文字に衝撃を受けた。正常な生理日数は、3~7日。私の生理は、毎回8~10日ほど続いていた。生理周期は、平均値の28日であるにも関わらずだ。1ヶ月の3分の1以上の期間が生理。健康な日が1週間もあったかどうか。
特に生理初日から3日目にかけて、重い月は迷走神経反射と呼ばれる症状に悩まされた。まるで体を雑巾絞りをされるように、体の真ん中から捩じ切れるほどの痛みに襲われる。吐き気と腹痛が続き、脂汗が止まらず、床をのたうち回って吐き散らす。
中学生の時は1年に1回ほどだったが、高校生~大学生の頃には半年に1回は訪れるようになっていた。
25歳になり、仕事中に吐いて早退してようやく「婦人科」を受診した
25歳になる頃にはオンラインでピルを処方してもらっていたが、それでも2、3ヶ月に1回のペースでそれは起こり、吐いて職場の人に自宅まで車で送ってもらって早退するなどしてようやく、婦人科を受診した。
薬で生理を止めて感じたのが、「そりゃあ毎日この調子で働けたら、さぞや出世できるでしょうね」。薬を飲みはじめてからの私は、毎日がハッピーだった。体が軽く、月1回くらいでメンタルは落ち込むが、それでも薬を飲む前に比べたら微々たる不調だった。
その分、男性への苛立ちが募った。毎日健康で、気分にムラもなく、いつも同じクオリティの仕事ができることの幸福を知らずにいるのだ。その分、「男性には社会的責任が伴う」などと言うけれど。
30才を目前にして、私はそれなりに責任の伴う立場にいる。何なら上司よりも実務を行なっている自負もある。だけど、評価は上司よりも低い。他の人に示しがつかないからだと。
出世したいわけではないけれど、吐いてのたうち回りながらこなした60%の仕事の出来が、健康な人が80%でこなした仕事の出来を上回っていたとしても評価されない。彼氏が無職だった数年、2人分の生活費を払っていたこともある。それでも、女には社会的責任が伴わないとでも言うのか。そう思うとどうしようもなく、虚しい。
せめて月に1日だけでいいから「生理休暇」を有給にして欲しい
生理休暇を申請した時、人事課の人から「無給になりますが、大丈夫ですか?」と電話があり、「大丈夫です」と答えた。彼女は何か言いたげな様子だったが、結局は何も言わずに電話を切った。
翌月、給与明細を確認すると、1日分の給与が引かれていた。悲しいなぁ、と思ったその時に悟った。彼女が言いたかったのはきっとこうだ。「体調不良による休みにしておけば、1日分さっ引かれなくて済むのだ」と。きっと周りに人がいて、大っぴらには言えなかったのだ。
日本の労働法では、就業規則には生理休暇を設定することが定められている。しかし、有給であることは義務付けられていない。働いていない人に給与を支払うのが不公平な気持ちも分かる。ズル休みに使われるかもしれないという懸念も分かる。
ただ、肉体的にどうしても男性と同じように働けないのだ。男性と同じだけの働きを求めるのならば、月に1日だけでいいから生理休暇を有給にして欲しい。あるいは診断書の提出を義務付けられてもいいから、診察費と薬代を支給して欲しい。そう思うことは、そんなに贅沢なことだろうか。