メイクはなんのためにするのか。仕事では当たり前のマナーだから?就活に必要だから?
私は自分のために、自分をより美しく、かわいく、強く見せるためにメイクをしている。
そう思うことができたのは、パキスタン人女性たちのメイクの楽しみ方を知ったからだ。
周りに合わせてするメイク。メイクをしないと社会は優しくない
大学生になるまではほとんどメイクをしなかった。
通っていた中高一貫校は、髪を染めるのもメイクするのもスカートを短くするのも禁止だった。顔色があまりよくないことがコンプレックスだったが、せいぜい色付きリップを塗るくらい。
大学に入ってからは、周りに合わせてなるべく毎日メイクをするようにしていた。
しかし、私の大学では課題が山のように出されたので、朝メイクをする時間がないときもあった。期末試験の時期には勉強と課題で連日徹夜せざるを得ず、コンタクトレンズも入らなくなった。
私は視力がものすごく悪いため、メガネをかけると目が豆粒にように小さく見えてしまう。
コンタクトも入らないし、化粧をする時間もないときはすっぴんにメガネ。期末試験の時期の私はいわゆる「ブサイク」の類に入っていたのではないかと思う。
いつもより身だしなみに気を使っていない、すっぴんにメガネの私に、社会は冷たいように感じた。電車やバスなどの公共交通機関で不親切な態度をとられたり、ぶつかられることが多くなったり。
露骨にではないが、女性なら「メイクしているときとしていないときで、周りの扱いが違う」と感じたことがある人は多いのではないか。
そう感じてからは、「なるべく生きやすくなるように」化粧をするようになった。化粧をしているときのほうが、周りが優しいから。
パキスタン女性は社会のためじゃなく、自分のためにメイクをする
大学でパキスタンについて勉強していたこともあり、大学2年生の夏にパキスタンに旅行に行った。パキスタンでは、ネイティブの先生のお宅にお世話になった。
パキスタンでは基本的に男性と女性は別々に行動する。旅行中、夕食を食べ終わり、私と一緒に行った友人は先生のご家族のパキスタン人女性たちと一緒に話をしていた。
彼女たちはメイクをし直しながら、私に「このリップが似合うんじゃない?」「このネイル似合いそう」など、たくさんの化粧品を勧めてくれた。
夕食も終わったし、これから外に出るわけではない。彼女たちは自分や、一緒にいる家族のためにおしゃれをしていたのだ。
パキスタンはイスラーム教の国だ。イスラーム教では、髪や肌など、女性の美しい部分は隠すべきだとされている。そのためムスリム(イスラーム教徒)の女性たちは身体のラインが出る服は日常的に着ないし、身内でない男性に会ったときは布で顔や髪を覆う。
しかし、ムスリムの女性たちもメイクやおしゃれを楽しんでいる。化粧品やおしゃれなランジェリーは、イスラーム圏でも売られている。
彼女たちは周りの目があるからおしゃれするのではなく、自分や旦那さんのためにおしゃれやメイクをするのだ。
先生のご家族の女性たちは、旅行の間たくさんのものを勧めてくれた。服や靴、アクセサリーを勧めてくれて、気に入ったら買ってくださったものもあった。
彼女たちは社会からの反応を気にしておしゃれをしているのではなく、自分のためにおしゃれをしている。自分のためにするおしゃれは今までとのおしゃれとは違い、とても楽しいことに気づいた。
私はこれからも、自分や好きな人のためにメイクを楽しみたい
日本には、「女性のメイクはマナー」のような風潮がある。きちんとした身だしなみの人を印象捉えるのはきっと男女関係なく、女性の身だしなみの延長にはメイクがある。これは仕方がないことだと思う。
しかし、毎日「身だしなみのため」「社会の目のため」にメイクをするのは疲れてしまう。
私はこれからも自分や、好きな人のためにメイクをして、楽しみたい。旅行中に出会ったパキスタン人女性たちのように。