思えば私は、就職活動をするまでメイクをしたことがなかった。

高校は、校則でメイク禁止。一部の女子はバレない範囲でメイクしていたようだけど、スカートすら曲げていなかった生真面目な私はメイクに興味すらなかった。専業主婦の母も普段メイクをする人ではなかったから、尚更だった。

就活のためビジネスマナーとして、最低限の「メイク」の仕方を覚えた

視力が悪かったのでコンタクトレンズをしていたが、受験勉強で多忙になってからは面倒くさくてメガネに変えた。そして、そのまま大学生になった。

すっぴんメガネで大して顔も良くない私は、さぞかし垢抜けていなかっただろう。友人はごく普通にメイクをしていたが、私がメイクをしていないことに対して友人にとやかく言われるようなことはなかった。

そうして迎えた就活。世間一般にメイクがビジネスマナーだとされていることは、薄々分かっていた。身だしなみを整えるのはまだしも、何故女性だけ+αでメイクを求められるのか。

そんな捻くれた反発心を抱きつつも、就活のためにメイクを勉強して、ひとまずビジネスマナーとして最低限のメイクの仕方を覚えた。説明会や面接に行く度に、慣れないメイクをなんとかこなしていた。そうして無事に就活が終わると、私はまたメイクをしなくなった。

彼氏に「20歳過ぎてもメイクしないのはどうかと思ってた」と言われた

そんな大学4年の夏。私は、高校1年の時から付き合っていて、大学からは遠距離になっていた彼氏に振られた。振られた理由はいろいろあるが、中でも心を抉られた言葉が「高校の時は校則があったから仕方ないけど、20歳過ぎてもメイクしないのはどうかと思ってた」というものだった。

そんなことを思われてたのか、と愕然とした。すっぴんの女と一緒に街を歩きたくないなどと思われていたのだろうか。「女性として失格だ」と言われたように感じた。

それから私はメイクをするようになった。メガネもコンタクトに変えた。見返してやるとか、新しい恋愛するぞとか、そんな気持ちはなかったが、とにかく自分を変えなければならないと必死だった。

すっぴんメガネをやめて少しだけ垢抜けたら、不思議とおしゃれがしたくなった。今まで選ばなかったテイストの服を選んでみたり、イヤリングを付けてみたりするようになった。

そうしているうちに、メイクは自信を持たせてくれたり、気分を上げたりしてくれるものにもなり得ることに気付かされた。捻くれた抵抗をせずに、大学時代の最初からメイクしていれば良かったのにな、とも思った。

捻くれた抵抗をしていたが、社会人になりメイクすることも板についた

社会人になり、すっかりメイクすることも板についた。とはいえ、最低限のビジネスマナーレベルのメイクしか身についていないので、休日でもナチュラルで薄い。

今の彼氏曰く、「顔の元のパーツはいいのにメイク下手くそだから、本気でメイクしたら相当可愛くなると思う」らしい。褒めてるのか貶してるのかよく分からないが、メイクを濃くしろということではないらしい。

しかし、一度メイクの呪縛から解き放たれた経験があるので、また新しい世界を見てみたいと思う。メイクとの距離感を上手く保って、良い武器にしていきたい。