顔のコンプレックスなんて挙げ始めればキリがない。目だったら、一重まぶた・短いまつげ・小さい瞳とか……。

コンプレックスに対して、一通りのことは試してきた。
一重まぶたはアイテープを試したけれど、どうもしっくり来なくて誰かに披露することなくやめた。まつげは時々エクステに手を出しては、飽きるというサイクルを繰り返している。今は裸眼で過ごしているけれど、またサークルレンズ・ブームが来るかもしれない。

さっき書いたコンプレックスは向き合った結果、良い意味で無関心になった。だからこそ、昔のわたしほどの情熱は持てないのだ。現在進行形で向き合い続けているコンプレックスは何だろう。情熱を超えて執念と呼ぶほどのコンプレックスを抱いているのは、眉毛だ。というわけで、わたしと眉毛の物語、はじまりはじまり。

同級生に「つながり眉毛」とからかわれ、散髪用ハサミで眉毛を切った

時は小学5年生にさかのぼる。クラスメイトの女の子に「つながり眉毛」とからかわれた。そんなに深い意味なく言ったのだろう。でも、わたしにとっては侮辱並みのインパクトを持つフレーズだった。もともと、ふさふさ眉毛を気にしていたから。

家に帰ると何とかしたい一心で、ハサミを探した。普通のハサミじゃなくて、子どもの散髪用のハサミで眉毛を切った。散髪用のハサミなら大丈夫という謎の安心感があった。でも、謎の安心感は何も保証してくれなかった。

スヌーピーのイラストが描かれた淡いピンク色のハサミを片手に、鏡を覗き込んだ。ふさふさ眉毛からは脱出できたけれど、脳内でイメージしていた端正な仕上がりの眉毛じゃなかった。何の前触れもなく、まばらにされた眉毛は、どことなく淋しそうだった。

翌日の朝を迎えても、もちろん眉毛はまばらなままだった。小学校に行くと、みんなが口々に「眉毛切ったの」と尋ねてきた。体育の時間には、クラスの男子に囲まれた。

あんなに大勢の男子に囲まれたのは、後にも先にもこの日しかない。このときから、わたしと眉毛の戦いが始まった。

大学生になっても、わたしの「眉毛エピソード」はたくさんある

大学生になるとメイクが当たり前になり、眉毛を描くようになった。塾講師のアルバイトのときは、スーツに合わせてキリッと眉毛を描いた。小学生男子に「つけ眉毛ですか?」と尋ねられた。わたしの眉毛は気合いが入りすぎていたのだろうか。

飲食店のバイトを始めてからは眉毛メイクの課題に、いかに落ちないかという項目が加わった。アイブロウパウダーを新しくしたり、眉マスカラを使い始めたりした。それでも、朝から晩まで働いた後の眉毛は全然綺麗じゃなかった。そういえば、店長には「眉毛が鱗粉みたい」と言われたっけ。

まだまだ書いていない眉毛エピソードがたくさんある。これでもかと眉毛について考え続けているのに、意外にも眉毛サロンには行ったことがなかった。

眉毛サロンの存在を知ったのは、大学生とき時だった。友人が眉毛サロンに行った話をしてくれた。もちろん興味はあったけれど、眉毛の処理は自力で何とかできると思ってきた。全身脱毛やまつげエクステは、プロの手を借りようと思うのに、眉毛にはそう思うことがなかった。

初めて眉毛サロンに行った。プロの手にかかった眉毛は、美しかった

そして、この前初めて眉毛サロンに行ってみた。施術が終わると目を開いて鏡を覗き込んだ。イメージしていた端正な仕上がりの眉毛だった。眉毛の描き方も教わった。

プロの手を借りたことで、メイクは楽になったし、楽しみにもなった。そして、小指で隠せてしまうほどの小さなパーツが、顔の印象を大きく左右していることを痛感した。

眉毛サロンに行った後に髪色を変えた。インナーカラーで原色オレンジを入れたのだ。勝手にオランウータン・オレンジと命名した。ちなみに暗髪の方はゴリラ・ブラックと呼んでいる。

眉毛の色をどう変えたらバランスが良くなるのか。数年前、髪色をピンク系のブラウンに変えたときにも同じように悩んだことを思い出した。
わたしと眉毛の戦いは、これからも続く。