私は「炭水化物」という言葉が嫌いだ。
決してパンや米などといった食べ物としての「炭水化物」を嫌っているわけではない。ただ、この言葉には嫌な思い出がある。
体型の話になり、「私と一緒で炭水化物系女子」と顧問に言われた
私がこの言葉を嫌いになったのは、高校生のときからだ。当時から、私は平均体重の範囲とはいえ、身長のわりにふっくらとした見た目だった。
この体型になり始めたのが小学校高学年からである。体型をそこまで気にするような子どもではなかったはずだが、高校生にもなると流石に周りの友達と自分の体型を比較するようになった。
「みんな可愛くて細くて背も高いのに、自分はなんでこんなに太っているのかな」と感じることが多々あった。高校生になってから、私はどんどん自分の体型や容姿を好きに思えなくなっていた。
ある日、部活の時間に、顧問の先生や部員の何名かと楽しくおしゃべりをしていたことがある。話題はいつの間にか体型の話に変わった。
その場にいた、清楚で、色白で、痩せている女の子の部員に対して「細いね~、ちゃんと食べてる?」とか、男の子には「ちゃんと食べて筋肉つけないとね!この腕、折れそうだよ」などと言い始める顧問の先生。文系の部活だから、ほとんどの部員が痩せ型や普通体型だった。
私は、痩せていることをツッコまれている部員の子たちを横目に「この時間、暇だな」くらいに思いながら、そのやりとりを聞いていた。自分はどうせ痩せていないから何も言われないだろう、という完全な油断だった。
すると、先生が突然私を見て、言ったのである。「Franは、私と一緒で『炭水化物系女子』だから、運動や食事制限を頑張らないといけないよね」と。
みんなを体型で線引きしていた顧問。勝手にカテゴライズされた
ん?「炭水化物系女子」?なんのこと?
理解できていない私を置いて、先生はそのまま話を進めた。
「私やFranみたいに、お米やパンが好きだと太りやすいから大変なのよ~。だから痩せてるあなたたちが羨ましいわぁ」と、次は他の部員たちに向けて話す先生。
その瞬間、私は何が起きているか理解した。先生は、その場にいたみんなを体型で線引きしたのだ。「炭水化物系女子」という言葉を使って、私は勝手に先生サイドに引き込まれていた。
先生の前でパンやお米を好きだと言ったことは一度もないし、白米やパンが特別好きなわけでもなかった。なんなら、中学生の時までは給食の白米を食器の4分の1まで減らしてもらっていたくらいだ。
そんな私が、体型を理由に「炭水化物系女子」とカテゴライズされたのである。
これがとてもショックだった。勝手に「炭水化物が好きそう」「炭水化物ばかり食べてそう」というイメージを持たれ、あまつさえ、友達であるみんなの前で「炭水化物系女子」とカテゴライズした先生。
遠回しに太っていると言われた私は、傷つきながらも、その本心を隠して笑うしかなかった。
高校を卒業して数年。あの言葉は今でも抜けないトゲのようだ
その日から、私は自分を「炭水化物系女子」だと思うようになった。たった1人から言われた言葉くらい、適当に流して忘れてしまえばよかったのかもしれない。
ただ、それがどうしてもできなかった。
あの日、「痩せている」に分類された他の部員のみんなと、「太っている」に分類された私と先生の間にはあるはずもない境界線があって、私にはそれがはっきりと見えてしまったから。
高校を卒業してもう数年が経つが、今でもこの言葉は私の中で深く突き刺さって抜けないトゲのようになっている。
大学生になって、より一層見た目や体型を気にするようになったからだろうか。
お風呂上がりのストレッチのたびに、都会でほっそりとした女の子たちを見るたびに、そして、あの日境界線の向こう側へと分類されたみんなをSNSで見かけるたびに、私は自分が「炭水化物系女子」だということを思い出す。