私は細い。足も腕も胴も首も。身長は168cmだから街中では高い方である。モデル体型?字面だけ読んだらそう思ってもらえるかもしれない。有難い話である。でも、実際はそんなにいいことはなかった。
痩せていることを指摘される度、胸をえぐられるような気分に
私は痩せていることがコンプレックスだ。鏡に映るひょろっとした姿が嫌いだ。けれども世の中には、痩せている人には体型の話をしてもいい、という風潮があると思う。周りが容姿に急に興味を持ち始めた中学生の頃から、社会人になってからもずっと、友達にも先生にも上司にも、私は自分の痩せている体型のことを指摘され続けてきた。
その度、胸をえぐられるような気分になる。何とか平気な顔をして、その場をやり過ごそうとするけれど、グサグサ刺されて流血している心の内を隠しているのはめちゃめちゃしんどい。悪気がない相手に向かって、喉まで出かかった反論を何度も飲み込んできた。
「ガリガリだね」(失礼ですよ。)
「細いね、折れそう」(折れたことないんです。)
「ご飯ちゃんと食べてる?」(余計なお世話です。)
「もうちょっと太った方がセクシーだよ!」(知ってるわ!)
誰だって、自分の体型を他人にジャッジされるのは不快なはず。それなのに、痩せている人には何を言ってもいいと思っている人がこんなにも多いのは何故だろう。だって、太ってる人には絶対そんなこと言わないでしょう?試しに、逆の立場になって考えてみて欲しい。
「パンパンだね」
「太いね、破裂しそう」
「ご飯ちゃんと我慢してる?」
「もうちょっと痩せた方が可愛いよ」
お分かりいただけただろうか。めちゃめちゃ失礼で無神経な人の発言である。こんなこと言ってくる友達とは距離を置くし、先生や上司だったら何ちゃらハラスメントだと騒ぎたくなる。どうか、心当たりのある全方位の皆さま。痩せている人に同じことを浴びせていることに気がついて欲しい。
「痩せているのは病気のせい」そうごまかした自分が悲しい
以前、上司が頻繁に体型を指摘してくるのにうんざりして、そういう病気だと言ったら二度と話題に出されなくなった。安心したと同時に、健康な私の体を病気扱いしたことに、自分で自分に嫌気が差して、悲しくなった。
私は特別なダイエットも食事制限もしたことはない。食べるのは遅いけど、量はそれなりに一人分ちゃんと食べる。適度に運動もするし、だらだら寝転がって休日を過ごすこともある。ただちょっとだけ、身長に対して体重が軽い。同年代の平均体重には届かない。子供の頃からずっと痩せ型ではある。たくさん食べても太りにくい体質だと思う。それでも、定期的に受ける健康診断では何の問題もない。どうにか、自分の体型を好きになろうと前を向く、一人の健康的な女子である。
本当は太りたい。私の悩みは理解されにくい
私だって本当は、女性らしい丸みのある体に憧れている。もっとメリハリのある体だったらどんなに良かったかと考える。痩せている体型を隠せる服ばかり着ていた時期もあった。夏でも、寒がりということにして、いつだって七部丈の服を着ていた。どうにか太ろうと、三食しっかり食べている。筋トレしてプロテインを飲んでいる。タンパク質をしっかり摂っている。私だって本当は、お洒落なノースリーブを着て、タイトなドレスに身を包みたい。
「本当は太りたい」なんて言って、大勢の女子を敵に回すよ?と鼻で笑われたことがある。嫌味に聞こえるとも言われたことがある。世の中には痩せるためのダイエットの情報ばかり溢れているけれど、痩せている人が太る方法なんてなかなか見つけられない。ジムの入会理由には、どこを引き締めたいかを選ぶ項目しかない。
私のコンプレックスは口に出すことすら受け入れられない。こんなコンプレックスなんてこの世にないことになっている。私の悩みは理解されにくいのだ。
もうこの際、理解して欲しいとまでは言わないから。だから最低限、痩せていることを口に出して指摘するのはやめてくれませんか?