24歳、私は人生に絶望していた。

就職活動に失敗、新卒で入った会社は結局半年で辞めた。その後の転職活動もとい再就職活動もうまくいかず、採用担当者からは人格否定のようなことも言われた。

私なんか生きていても仕方がない。そう思っていたときに、私はとある作品に出会う。それが私の人生の光になるとは、当初は思いもしなかった。

人生に絶望していたとき、「羅小黒戦記」という作品に出会った

その作品というのは、中国アニメ『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ) ぼくが選ぶ未来』というものだ。森を追われた黒猫の妖精小黒(シャオヘイ)が、他の妖精や人間との関わりの中で成長していく物語である。

キャラクターデザインの可愛さと、トレーラーで観たアクションシーンに圧倒された私は、日本語吹替版公開日の朝1番の回を予約した。これがすべてのはじまりだった。なんとこのあと数ヶ月に渡って、日本語吹替版と中国語音声日本語字幕版を合わせて十回以上も劇場に足を運ぶことになるのである。

ストーリーはもちろん、劇中の音楽や演出も素晴らしかった。子どもが子どもらしくあることや、その子どもの近くに安心して頼ることのできる大人がいるということ、性別による差別がないことなど、私が今まで生きてきた中で感じていたストレスが作中には一切なかった。

スッと心に入ってくるストーリー、キャラクターのセリフ、清々しいほどのアクションシーン、すべてが私の心に響いたのである。鑑賞後にこのロシャオヘイセンキという作品のことがもっと知りたくなり、インターネットやTwitterなどで検索をかけてみた。

すると、どうやらbilibili動画とYoutubeにショートアニメがあるということ、外伝漫画の『藍渓鎮』というものがbilibili漫画で絶賛連載中であるということを知った。公式グッズやSNSアカウントもあり、私は鑑賞した日から少しずつそれらを追ってみることにした。これが、さらなる沼への入り口だった。

作品や様々な情報を追っていくうちに、私の生活にも変化が現れてきた

みるみるうちに私は沼にハマっていった。何せ作品の世界観とストーリーが面白く、関連作品を追うごとに理解が深まっていくのだ。

作品やその周辺の様々な情報を追っていくうちに、私の生活にも変化が現れてきた。まず、転職活動もとい再就職活動へのモチベーションが高まった。採用担当者に酷いことを言われて以来、半ば自暴自棄になっていたが、一歩前へ踏み出す決心がついた。作品グッズを集めるためにはお金が必要で、そのお金を稼ぐ手段を得なければならないと思ったのだ。すべては羅小黒戦記とその制作スタジオHMCH(寒木春華)のためである。

そしてもう一つは、中国語の勉強を始めたことだ。映画には日本語吹替版があるが、ショートアニメや外伝漫画は中国語である。翻訳を載せているサイトもあるとはいえ、こうも作品に触れていると次第にどうにか自力で理解できるようになりたいと思うようになる。

中国語は大学を卒業してから前職で少し使ってはいたものの、仕事を辞めてからは全く触れていなかった。ホコリを積もらせ、本棚でくすぶるテキストたちを引っ張り出し、基礎から中国語の勉強を再開した。

元気の源は人それぞれ。オタ活から日々生きる活力を得ている人もいる

「元気」を与えてくれるものは人それぞれだ。オタク活動から日々生きる活力を得ている人もいる。私は『羅小黒戦記』との出会いによって、その一人になった。

『羅小黒戦記』は、ちょうど最近ショートアニメの配信が一区切りついた。『藍渓鎮』の方は現在進行形で連載が続いている。さらに映画の続編制作に向けた新たなプロジェクトが企画されている。

すでに本国では十年も展開されている作品なので、次回作が出るまでにどれほどかかるかはわからない。監督によれば、映画は三部作らしい。ぜひ完結まで見届けたいものである。

私の今の夢は、『羅小黒戦記』および『藍渓鎮』の完結を見届けるまでは生き続けること、加えて海外へ自由に行けるようになったら必ず中国を訪れたいということだ。その夢が叶うまでは元気でいたいし、作品が存在する限り私に生きる理由を与えてくれる。

人生に絶望していた私に、生きる元気と希望を与えてくれた作品。それが『羅小黒戦記』である。