私が汗を一番かいた夏は、中学生時代だったと思う。当時、私はサッカーをしていた。
保育園の頃からボールを蹴るのが好きで、小学校に上がってからは近所のサッカークラブに所属した。
「女子なのにすごい」を真に受けて、レベルの高いチームに所属すると…
そのころは紅一点で珍しがられたり、女子がサッカーをするイメージがない先入観からか「女子なのにすごい」とよく声をかけられたりした。
サッカーをするのは本当に好きだったけど、上手いかと言われればそうでもなかった。それでも、皆が適当に言ってくれた「女子なのにすごい」を真に受けて、中学生になってからはもっとレベルの高いチームに入ることにした。
それは、私が住んでいる市で唯一の女子だけでできたチームだった。正直、初心者もきっとたくさんいるのだろう、私はどれくらい活躍できるかな、と舐めてかかっていた。
案の定、その期待は初日にへし折られることとなった。
中学に入っても本気でサッカーをしたいと思えるほどの気持ちを持つ人は、皆それだけの腕前と体力を持ち合わせていた。一方の私はというと、基礎の動作やトレーニングすらもできていないことを痛いほど分からされていた。
練習は、上手で試合に安定して出ている人たちのAグループと、初めてボールに触れた人もいるBグループに分けられていた。言うまでもなく、私は後者だった。
もちろん、私にも悔しいという気持ちは強くあった。しかし、いつまで経っても試合のスターティングメンバ―に入ることはできず、好きだったサッカーのことを嫌いだと思ってしまうようになった。
Aグループに呼ばれる頻度は少し増えても、結局サッカーを辞めた日まで安定して試合に出られるような期間はなかった。
大学でフットサルサークルへ。ただ、楽しむだけの時間にワクワクした
私が二番目に汗をかく夏は、今だ。大学生の私は、フットサルのサークルに所属している。
入学した当初は、サッカーみたいな感じのサークルあるんだな、という感じでパンフレットを眺めているだけだった。新型コロナウイルスの影響でオンライン授業を受けながら退屈な日々を過ごしているうちに何かに挑戦したくなって、まだ体験すら行ってないのに勢いでフットサル部の部長に連絡をとって入部までした。
とはいえ、一度は嫌いになったほどの中学時代の苦い経験がずっと心に残っていたために、サークル活動が再開されて初めて体育館に行った日はとても不安で緊張した。
しかも、ボールには3年近くちゃんと触っていなかったので、簡単なパスすら通す自信がなかった。
しかし、いきなり始まった試合形式のゲームはとても楽しかった。楽しいと思ったことにびっくりもした。コーチや監督もいない、ただ楽しむために体育館に集まった大学生だけでするフットサルは、とてもワクワクした。
年に一~二回ほど大会もあって、それに向けて熱心に練習する時期もあった。ヘトヘトで汗だくになりながらボールを追いかけて、家に帰りつく頃には全身が疲労感で溢れた。
それでも悲観的になるどころか、私の「フットサルが楽しい」という感情は消えなかった。
迎えた大会の日に感じた緊張や勝った嬉しさ、負けた悔しさすら楽しめた。ただ何となくやるのではなくて、本気で打ち込むことさえも楽しいと思えたのは心から嬉しかった。
今の時間が、心の充実度では堂々の一位。楽しい気持ちを忘れずに
サークルに入って1年が経った。中学時代のように毎日毎日サッカーのために時間を費やしてはいないし、コロナ禍の影響を受けて思うように練習できない日々も続いている。
だから汗をかくという意味では人生で二番目なのだが、心の充実度では堂々の一位だ。
中学でサッカーを辞めた時、青春なんてうまくいかないし面白くないと感じていた。
しかし、その時代の思い出が大切ではないわけではない。楽しいと思えるのは、一度サッカーを嫌いになったおかげなのかもしれない。もしずっとサッカーを続けていたとしたら嫌いなまま終わって、楽しむということすら思い出せなかったかもしれない。
これからもフットサルを続けたいと思える今と同じぐらい、辛くて苦しかった中学時代のことも大事にしたい。
そして、楽しいという気持ちをずっと忘れずにいたい。
今かいている汗は、私に「青春はまだ終わっていない」と思わせてくれている。