最後の恋から10年。終わったと思っていたが、本当の意味では終わっていないのかもしれない、と気付いたのは最近だった。
高校進学の時、私は自身が通う中学校からただ1人、入学した。
誰も知らない、みんな初めまして。そんな環境は望んで進んだとはいえ、緊張と不安に溢れた日々だった。
彼を想い、授業中も、休み時間も、ただただ彼を意識する日々
そんな高校1年目に出会ったのが彼だ。「どこを好きだったのか?」なんて聞かれても、すぐには答えられないほど、「いつの間にか」好きになっていた。
クラス全員での自己紹介の日。彼の方が出席番号は前。彼は「好きな歌手はaikoです」と言った。心の中で、「あ、私も」と思った。
自己紹介の内容は人それぞれで、誰しもが好きな歌手を言うという決まりはなかったけれど、思い切って「好きな歌手はaikoです」と声に出して伝えたのが最初の勇気だった。
秋の文化祭に向けて、夏休みからはお祭り気分が続いていた。そんな頃、ラッキーな事に前後ろの席になったのだ。
ワクワクした気持ちで毎日通っていた。彼が後ろだったので、毎日毎日休み時間のたびに後ろを振り返っていた。授業中も、休み時間も、ただただ彼を意識する日々は夏の青春にはピッタリすぎるほど。夏が終わり、文化祭が終わるとともに、私の気持ちは大きくなりすぎて、駅前のミスタードーナツに呼び出して告白した。
ドーナツとカルピスと、彼の「うん、付き合おう」の一言が鮮明に刻まれた。
初めて好きになった彼との始めと終わりは、今でも鮮明に思い出せる
今振り返っても、これほど始めと終わりが鮮明に思い出せるなんて、いよいよ驚いた。初めて好きになった彼、初めてお付き合いをした彼、初めてデートをした彼。何もかもが初めてだったからなのかもしれない。誰だってそうだ……誰だって、なんだって、初めては忘れられないのだ、と自分に言い聞かせている。
お別れした日まで、鮮明に焼き付いている。2011年3月11日。
東日本大震災の日。あの日に、私たちは別れを決めた。
住んでいたのは九州だったけれど、学校内に放送が流れ午後の授業も中止。急遽、全員が下校することとなった。そんな日に、私たちは大きな喧嘩をして、別れた。
次の日も、その次の日も、テレビをつけると目を覆いたくなるような光景に胸を痛めて泣いた。なんでこんな時に、あんな喧嘩を……と後悔しても後悔しても、もう過ぎ去った過去には戻れない。そうして、私たちは本当に別れてしまった。
別れてからの日々は、どこかで本当はよりを戻すのではないか、と淡い期待を抱いたまま過ごしていた。けれども、そんなことはなく。
日々受験に向けて、勉強の毎日を過ごし、晴れて二人とも希望校へ合格。私は東京へ、彼は京都へと進学し、もう一度よりを戻す可能性なんて限りなくなくなってしまった。
10年経った今も終わらない恋の理由は、あの恋を忘れたくないから
再会したのは2年後の成人式での同窓会。彼はあまり変わらず、懐かしいという気持ちよりも、圧倒的な緊張感だった。
同窓会ではクラスごとに円卓へ。彼と私のクラスは遠かったので、いつ話せるのだろう……とやきもきしていた。「久しぶり」と、彼の方から話しかけてくれた。
嬉しくて、ドキドキして、「成人式に来てよかった~」と思った。
けれど、そんな時間は5分も続かず、彼のクラスの女子たちが連れていってしまった。彼と話せたのは「元気だった?」「からあげ食べる?」のたった2言だった。
もう今となっては、彼が今、何をして過ごしているのかもわからない。どこにいるのか、はわかっている。
偶然会ったりすることもなくはないのかもしれないけれど、今のところはない。
「あの恋」が終わっていないから、10年間も恋をしていないのか。
終わっているけれど、しなかったのか……自分でも良く分からない。
分かっていることはただ一つ。
10年経っても忘れられなかった「あの恋」は、きっとこの先も忘れることはないのだろう。
終わらない恋の理由、それは、「あの恋」を忘れたくないと思っているから。
いつまでも大切に、「心の中では終わることのない」たった1つの恋。