「リモート同窓会終わったから、もう部屋使っても良いよ。」
「ん、了解。」
「まだゲームやってたの、てかレベル上がりすぎ」
「まあね、俺強いもん」
小さなソファに隣り合わせで座り、画面を見ながら笑いあっている男女が、結婚1年未満で離婚寸前の夫婦だとイメージ出来る方はどれほど居るだろうか。

先のアラサーリモート同窓会で話題になったのは、誰が結婚しただの、出産しただの、実は結婚することになっただの、そういった類の会話。
私は内心気まずさを感じつつ、不自然でない程度に会話に参加する。『結婚イコール幸せの入口』と考えて疑わない友人たちが眩しい。心から祝福しているはずなのに下腹部あたりがむかむかしてきて、結局、同窓会は途中退室してしまった。ごめんよ。

私は結婚しているという事実をほぼ誰にも伝えていない

私は、結婚しているという事実をほぼ誰にも伝えていない。
元々、転勤や転職、遠距離恋愛の末に半ば勢いに乗った形で籍を入れており、結婚報告などは新生活に慣れてから行うつもりでいた。
約5年の交際期間中に色々な誤解や修羅場があったし、私がストレスで精神的に参って相手を何度も傷つけてしまったことから、別れを切り出した過去もある。それでも最終的には結婚を選んでくれた彼に感謝しかなく、出来る限り仕事も続け家計を支え、精一杯努力すると決めた。

でも、現実は甘くない。
同居翌月には「冷静に考えると結婚は違った」という彼からの言葉。目の前が真っ暗になった。自分を責め、相手を責め、泣き喚き、仕事も今まで通りこなせなくなった。
お互い満足に眠れない日々もあったし、勿論レスだ。一体どうすれば?

暗いトンネルから抜け出したくてカウンセリングに通い始め、気付いたことがある。
それは、私自身に『幸せになる準備ができていなかった』ということだ。自分の中の幸せを受け止めるネットが穴だらけでボロボロで、他人からの愛情を上手く受け止められず沢山落としてきた、その結果が今の自分。
だから、自分が取りこぼしてきた幸せを他人が持っている事実に泣けてきて、辛くて辛くて、彼にも申し訳ないのだ。

自分すら愛せていなかった私には結婚はまだ早かっただけ

長い時間をかけて、私は望まない肉体関係を持つことで自分を、時には相手も傷つけてきた。気が進まなくても求められたら応じなければと思っていたし、嫌でも迫られると思考が停止していた。
こんな自分を卑下し続けていたから、仕事で評価されても誰かに愛されても、自分は価値のない人間だと思い込んでしまい、純粋な気持ちで愛情を受け止められなくなったのだろう。同じように考えている方がもし居るなら、自分は汚い人間ではない、幸せになって良いのだと気づいてほしい。
自分ではどうしようもないと思うのであればカウンセリングに行ってほしい。自分を傷つけるのは辞めて他者からの愛情を受け止められるようになってほしい。

今回の結婚について、「自分すら愛せていなかった私には誰かとの結婚はまだ早かった、ただそれだけのことなのかも」となんとなく思い始めている。
罪悪感、人生への不安で号泣する日もあるが、不思議なことに、今はレスなのに以前と比べ心が満たされているし、ほんの少しだけ自分のことが好きになった。
彼からの愛情を受け止めきれなかったことを心底後悔しているけれど、それと同時に、やっと自分を愛せるとも思う。

祖父の葬式で祖母が色紙に書いたメッセージ。私もいつかそう言われたい

ふと、数年前の父方の祖父の葬式を思い出した。私たち孫の発案で、メッセージを書いた色紙を入れようという話になった時のことだ。
皆が様々なメッセージで余白を埋めていく中、祖母のコメントは「愛してくれてありがとう」のたった一言。その時の祖母の気持ちは私には到底理解できるものでは無かったけれど、その一言でなんというか、「彼女たちの夫婦生活は、人生が終わるその時には幸せで満ちていたんだ」と思えてまた泣けてきた。

本音を言うと私は、何十年後かに「愛してくれてありがとう」と彼に言いたかったのかもしれない。残念ながら叶わぬ願いになりそうだけれど、残された時間で私は彼に何を与えられるだろう。心から彼の幸せを願えるようになりたいし、少しずつ自分の幸せネットを満杯にして、彼にも他人にも幸せを与えられる生き方をしたい。そして、「愛してくれてありがとう」と言われつつ人生を終えたい。

最後に、愛情や幸せについて気づかせてくれた旦那よ、これから別の道を歩むとしても結婚して良かったと思うし、愛してる!これからは幸せを取りこぼさない自分になるよ!