夏真っ盛りだというのに、私はもう秋の事を考えている。1年に1度のハロウィーンイベントがあるからだ。
このご時世でイベントは軒並み自粛要請が出ているが、地元のイベントは小規模なので毎年参加している。「ここが自分のふるさとだ」と実感出来るのは、地元のイベントがあってこそだと私は思う。

何の仮装をするかは、「鬼滅の刃」の「胡蝶しのぶ」とすぐに決まった

去年の地元のハロウィーンイベントは、仮装した状態での参加が可能で小規模に行われた。一昨年に参加した時はカラオケ大会やダンスコンテスト、仮装コンテストがあり、私はその時仮装コンテストでマイケル・ジャクソンの仮装をして第3位を受賞し、審査員の方から「なりきり具合が素晴らしい!」とお褒めの言葉を頂いた事がある。

しかし、去年はコロナ禍の影響を受けてコンテストが中止になってしまった。それでも私は「仮装が出来るだけでもありがたい!」と前向きだった。
そして、何の仮装をするかは一発で決まった。劇場版が公開され、ブーム真っ只中の漫画、アニメ「鬼滅の刃」だ。私は劇中のキャラクターであり、「柱」と呼ばれている「胡蝶しのぶ」が好きなので、彼女の仮装をする事にした。

イベント当日。自宅で仮装の準備をした後に車で親と一緒に会場である道の駅に到着し、緊張しながら入り口をくぐった。
明るい音楽が流れ、青空の下、子ども達がミニゲームに興じている。青果店には地域で採れた野菜や果物が並べられている。大きなイベントではなくなっても、賑やかさは変わっていなかった。

「しのぶさんだ!」と声を挙げる地元の人達との交流で、心が温まる

いつもはのどかな地元が、まるで別の世界のように感じる。どんなお店があるのか見てみようと歩いていると、思いもよらぬ事が起こった。小さな子ども達に、一緒に写真を撮って欲しいとお願いされたのだ。
子ども達の中には、私と同じ鬼滅の刃のキャラクターに仮装した子が何人もいた。私は途端にスイッチが入り、本物の胡蝶しのぶのように振る舞いながら子ども達の声に応じた。子どもも大人も、仮装した私を見るなり「しのぶさんだ!」と声を挙げていた。

目立った催し物が少なかった為、仮装したまま道の駅の中の喫茶店でスムージーを飲んだり、八百屋さんでどんな食べ物があるかを見てみたり、地域で採れた野菜を使ったお弁当を買ってみたりと、以前よりも「ふるさと」を感じる事が出来た。同じ地域に住む色々な人と、仮装を通じて心温まる交流が1日中続いた。
家に帰り、子ども達と撮った沢山の写真を見返しては、「ここがふるさとで良かった」と呟き、これからも地元を大切にしたいと思うようになった。

今、私はゆるいコスプレイヤーとして本格的なコスプレイベントにも参加しているが、ハロウィーンが近くなると地元のイベントの温かい雰囲気が恋しくなる。都会も悪くはないけれど、地元の温もりは実感する度に強くなる。
今年は何の仮装をしようか。地元の人達の嬉しそうな顔を思い浮かべると、自然とやる気が沸いてくる。ふるさとでの仮装は、私の生き甲斐の一つかもしれない。