母校である高校が女子校から共学になる。そんなニュースが飛び込んできた時に抱いた感想は、新しくなる校舎とそれはそれは可愛い制服への妬み、そして、女子校である間に通う事が出来て良かった、という安堵だった。

あの空間はそれぞれが自由に好きなことに内こめた、心地のいい場所

今になって考えてみると、あの空間は随分と生きやすくて心地の良い場所だった。
誰もが何かのオタクで、でもお互いを馬鹿にする事もなく各々が勝手に自分の趣味へとのめり込んでいた。アニメにマンガに声優、2.5次元、ジャニーズ、KPOPに邦ロック……多種多様な人間達が絶妙に共存していた。

また、部活の種類が多かったのも良いところだった。女子校だからか文化部が多くてみんな何かしら部活に入っていたし、なければ同好会を作ったりと、やっぱりみんな自由に好きな事に打ち込んでいた。

私自身も周りの理解と協力もあって掛け持ちをさせてもらっていた。初めて楽器を吹いたのも、初めて人前でお茶を点てたのも、部活に入らなければきっと経験することがなかった。クラシックを聴くことが少し楽しいと思えるようになったのも、和菓子が好きになったのも、この時の経験があったからだ。今もバスクラを見るとちょっぴりわくわくしてしまう。多分もう吹けないけれど。

「自分は自分」のスタンスで生きていたあの時は何て楽だったんだろう

そういえばセクシュアリティについても、今になって思うと大して気にせずに過ごせていたような気がする。女子同士で付き合っていた子もいたし、隠す訳でもなく、こちらもそれを知ったところで「へーそうなんだ」で終わり。人の恋愛事情なんてそんなもんだ。

学年のカラーもあったと思うけれど、特に自分の時はあからさまないじめもなく、そりが合わない子は合わないなりに距離感を保って過ごしていた。

結局みんな自分は自分、というスタンスで生きていたんだろうな。あの時は何て楽だったんだろうと、大人になり働き出してしみじみと感じている。

あれから4年が経ち、最近は高校生活が随分と遠く昔のことのように思う。
たった4年、されど4年。思い出すと眩しくて胸が痛むのは私の今の生活が酷く色褪せているからか。

みんなバラバラの場所で仕事を始めたり、結婚したり、子どもができたり。近況を知るのはFacebookを開いた時だけ。成人式も同窓会も出ていない私は尚更かつての友人達が遠くて。それぞれの道を歩いてだいぶ遠くまで来てしまったね。

もう一度高校生に戻れるなら、私はあの頃の女子校に通いたい

もし、もう一度高校生に戻っても、私はあの頃のままの女子校に通いたい。今時の可愛い制服が着れなくても、新しい綺麗な校舎じゃなくてもいいから。
みんなでゲラゲラ笑って、あの先生がかっこいいとか将来結婚したいとか、子どもは欲しいかとか。パックジュースとスナック菓子だけで何時間も居られるあの場所に、戻ってみたい。  

教室をナプキンが飛び交い、スカートをばさばさ仰ぎながら涼をとる。箸が転がっただけでもお腹を抱えて笑って、一生分ってくらい笑って、盛れるフィルターで写真を撮って、そんな毎日。
きっと一生忘れない、青い春であふれていた日々。