「長崎出身です」
自己紹介でそう言うと、返ってくる言葉は毎回同じだ。「修学旅行で行ったよ!」「ちゃんぽん!」「被爆体験の話聞いたことあるよ」などなど。
毎回似たようなことを言われるが、それほど県外の人たちが長崎に持っているイメージというものは固まっているのだなと気付かされる。

長崎を出て1ヶ月。あまりにも違う環境にホームシックになった

大学卒業後、私は生まれ育った長崎の地を出て関東の旅行会社に就職した。そして自己紹介で「長崎出身です」と話すたび同じ反応をされるのである。どう返すのが正しいのかはいまだにわからない。
旅行会社に就職した理由は「長崎に修学旅行生を送り込みたい」という気持ちからである。
しかしそれとはまた別に、長崎という地方を脱出して都会で暮らしてみたいという気持ちもあったため、関東の会社を受けた。

関東での生活は、憧れていた生活そのものだった。東京にはお店がなんでもある、電車に乗ればどこにでも行ける、劇場やイベントなど趣味が近くに感じられる恵まれた環境。コロナ禍でも楽しめるものは色々ある。
都会での生活は素晴らしいと思った。

しかし、長崎を出て1ヶ月もしない頃、急に地元が恋しくなった。
決して関東での生活が嫌になったというわけではない。理由は単純で、自分の周りに地元を感じる術がないからである。
周りは関東出身ばかりで、誰も方言というものを話していない。見渡しても周りは長崎のように自然や坂もなく、あるのはビル群と忙しなく行き交う人たちばかり。自分が22年間育って来た環境とあまりにも違うため、ホームシックになったのだ。

出たいと願っていた地元を出て気付けたのは、長崎にしかない魅力

長崎のことは、もちろん地元であるから好きな場所ではあったが、やはり都会への憧れからあんなに出たい出たいと願っていたのに、いざ出てみると“出て気付く良さ”というものがあると初めて知った。方言、広い空、海、自然、坂、異国情緒漂う街、路面電車……挙げるとキリがない。

何にも代えられない地元のあの雰囲気を思い出せば思い出すほど、「私は自分が思っていた以上に長崎のことが好きだったんだ」と思うようになり、その途端急に帰りたくなった。

帰りたい気持ちに拍車をかけたのは旅行会社という働く環境も影響している。
旅行会社の社員、つまり旅行のプロ。社内には長崎のことを私以上に知り尽くしている上司や先輩方がたくさんいた。

私が「長崎出身です」と言うと、いつもの返答に加えて「長崎、いいところだよね!」と返してくれる。そう返された時に思わず「そうなんです、いいところなんです!」と満面の笑みで返している自分がいた。

九州の西の果て。小さな街だが人は温かく優しい私のふるさと

私は長崎のことをそう言ってもらえることが嬉しく、そんな地元を誇らしく思った。そう言ってもらえると不便な場所だから、地方だからと嫌がっていた短所も愛おしくなってきたのである。

私は結局、入社して数ヶ月経った頃、慣れない生活で体調を崩して会社を休むことになった。今は地元に帰って来て療養をしているが、帰省してみるとやはり落ち着く。空気が美味しく感じる。

仕事は仕事で頑張りたいため、療養が終わればまた関東に戻ると思うが、そう遠くない未来に長崎には帰ってこようと決めた。関東で働いている間、心はいつも長崎に置いておく。
一時期は長崎の若者の人口流出がワーストランキングに入ってしまうことが問題視されたこともあったが、一度長崎を出た私は思う。

出た人は戻ってきて、長崎の外で見て学んできたことをきっと地元に還元してくれるのではないかと。帰る場所があると思うと強くなれる気がする。こんなに素敵な街を嫌いにはなれないのだから。
九州の西の果て、小さな街だが人は温かく優しい。私はそんなふるさと長崎が大好きだ。