今年の夏、考えに考えて、ついに行動に移したことがある。それは、新型コロナウイルスのワクチン接種だった。
きっかけになったのは、今年の夏のまだ早い段階に、オンラインで友だちと話したことだった。
友人から「ワクチン2回接種終わった」と聞き、わたしは驚いた
「わたし、2回接種終わったんだけど、副反応が結構つらかったよ」と友人が言うのを聞いて、「なんと?!」と思った。ワクチンをすでに接種している? しかも、もう2回も??
聞けばほかの友だちも、2回接種は完了してはいないものの、予約はもう取っているとか何とか。ちょっと待って、みんな、そんなにすいすい打てちゃうものなの? と、わたしはびっくりした。
わたしは、新しいワクチンというものが本当に大丈夫なのか? と疑問を覚えていたし、そもそもワクチンに限らず、新しいものには抵抗がある性格なので、打つのがちょっと怖かった。まずは様子を見よう……そう考えていたところ、友だちはすでに接種済みと知ったのだった。
友だちに対しては、「へえ、早いね~」などと普通の顔をして言っていたが、内心、「えっ、早っ。えっ?!」とかなり驚いていた。
ワクチン接種について調べて、わたしは未来の子どものことを心配していた
その後、改めてSNSでさまざま情報を見てみると、ワクチンに対する意見は二分されているなと気づいた。一つは、「ワクチンはリスクもあるけれど、基本的に打った方がいい」というワクチン肯定派の意見。そして、もう一つは、「ワクチンは危険、よくない、ヤバい」と唱えるワクチン否定派の意見(ワクチン陰謀論なども後者)。
世間をきちんと見渡せば、特にわたしと同じ20代の人なんかには「とりあえず、様子見」の立場の人が一定数いたに違いないが、SNSで様子見派の意見が台頭することはないので、結果的に「打った方がいいよ~」と「打つな! ヤベえぞ!」の二極に分かれてしまうのだと思った。
わたしはさらに情報収集したいと思い、次はワクチンを打ったときのリスクとはなんぞ、と調べてみる。パッと出てくるのは、比較的若い世代は副反応キツいよ、ということ。それから、ワクチンを打っても100%罹患しないわけじゃないよ、ということ。
でもな~、と調べながら思う。なんか知りたいことと違う、そうじゃない。そう、もやもやしていると、同世代の女性で、やはりワクチン接種をためらっている人が言った。「やっぱ、子ども産むとき、問題ないかな?って思っちゃうよね」。
聞いて、ああああ、それそれ! と思った。将来の子どもへの影響、それがわたしの気になることだ。
わたしの副反応とか、わたしの罹患とか、「現在のわたし」がどうこうというより、未来の子どもにどう作用するのか、それが心配なんだ。
でも、そう気づいてめちゃくちゃ驚いた。だってわたしは未婚だし、子どもなんて影も形もなく、匂いもしないし、夢にも見ない。なのに、わたしは将来の子どものことを意識し、心を砕いている。
愕然とした。自分に備わっていた女としての本能みたいなものに、思いがけず直面してしまったのだから。
ワクチンを接種して、わたしは「自分が知らなかった自分」に出会った
そうして、わたしは胎児や妊婦へのワクチンの影響について、情報収集し始めた。産婦人科の医師の方が説明するオンラインセミナーを視聴したり、医療機関や政府のwebサイトをさまざま見たりした。海外では妊婦さんでワクチン接種をする方も結構いるらしく、接種後の子どもへの影響などを含め、調査が進んでいることもそれで知った。
で、調べて結局どうしたかというと、ワクチンを接種した。わたしが心配していたような子どもへの影響は、見られないということが調べてわかったからだった。
実際にワクチンを接種して、注射を打った左腕をかばって家に帰りながら、わたしは「自分が知らなかった自分」に出会ってしまったなあと思った。ワクチン接種というたった一つの行動をするまでに、予期せずわたしは自分が何を大切にしていて、何を守りたいのか知ることとなった。
それは、わたしが知らないわたし自身の発見(というとちょっと大げさだけど)につながったなあ、と感じたのだ。こうやって、いろんなことを判断したり、時には決断したりして、自分のことをどんどん理解していくものなのかな。そう思った夏の出来事だった。