私には大学時代から推している俳優がいる。去年の12月、彼がコロナウイルスに感染したというニュースを観た。

まだこの時は仕事をしていた。その報道を知らされたのは、日勤上がりの夜6時頃。いつものようにTwitterを開いたら、画面上が騒がしくなっていた。

私の家にもワクチン接種券が届き、私はなかなか予約を取れずにいた

一部では、生放送番組内で日頃から手を尽くして下さっている医療従事者へ感謝を述べるが、夢の国を貸し切って呑気にロケをしているところを批判する声が、彼に対して向けられていた。「言っている言葉とやっていることが違う」と一方的な心無い言葉の刃である。

私にとって、彼は本当に癒しの存在。その彼が消毒を徹底しても感染してしまった。私は、この世の終わりだとさえ、絶望した。悪い夢だと言い聞かせながら、仕事に向かう毎日がしばらく続く。

数ヶ月後。ワクチン接種券が各世帯に郵送され、私の両親は即座に予約を取っていた。なかなかタイミングが合わず、私はワクチン接種の予約を取れずにいた。

連日、報道されるワクチンの副反応が様々で、その怖さから気が進まなかったのだと思う。打つか打たないかでは、明らかに違う。それは分かっているけれど、副反応で数日後にどうなるのか、良い方向に想像できなかったのが正直な気持ちである。

推しの言葉を思い出し、ワクチン接種の予約に踏み出すことが出来た

そんな恐怖の渦中に閉じ込められた私は、昨年末にコロナウイルス感染が確認された彼の言葉を思い出した。生放送への復帰後、彼は自分が出演を見送って休んでしまった事への謝罪をした。

アナウンサーからコメントを求められた時には、「誰かにうつしてしまったのではないかと不安が募った。7度1分の熱で声が出ないという症状が出ていなければ、見過ごしていたかもしれない」とコメントしていた。そして、他の芸能人の感染については、しっかり休んで欲しいと労わっている。

彼の言葉で、誰がどこで感染しているのかハッキリしないからこそ、誰にも感染者を責める権利がないと確信した。彼の言葉を思い出したからこそ、ぼんやりとした不安と怖さが軽減されて、ワクチン接種の予約に踏みきることが出来た。

私が1回目を打ち終わると、ワクチンの供給が滞って、予約が取れないという状況になっていた。予約をしていた人には病院からキャンセルの電話がかかってきて、街頭インタビューやキャンセル電話が来た当事者への取材等で、様々な意見が上がった。

1番多いのは、副反応に関してである。熱は人によって異なり、それ以外の接種箇所が痛くなるという症状や、身体のだるさなども発症する。1回目は軽い症状で、2回目は少し重くなる人が多く出ていた。中には重くなって入院する人もいる。

母の2回目ワクチン接種後の反応を見て怖いけど、推しのためにやる

私は1回目のワクチン接種の時点で、接種した日の夜中の2時に微熱が出た。最初は少し体が火照っていると感じただけで、次第に熱くなっていく身体に異変を察して熱を測った。7度3分だった。頭痛も酷く、身体が重くなっていた。

接種した翌日は1日中ぐったりとして、動く気力すらなかった。でも、お腹は空いている。話すことも出来た。どこか手すりに掴まれば、歩くことも出来る。これで2回目打つとどうなるか。それは母親が2回目の接種日翌日に8度まで熱を出していた様子で恐怖感を覚えた。

母親が「お腹は空いているけれど、体が重くて起きられない」と言うので、「たまごサンドは?」と聞くと、「食べたい」と即答。一安心した私は、コンビニでお昼を買ってきた。段々と落ち着いてきた母親は、2日後には完全復活してくれた。

私の怖い気持ちは母親が元気を取り戻しても、まとわりついている。2回目のワクチンを打つのは怖い。全てを諦められれば、死ぬことを選んで楽になる方が良いのかもしれないと毎日過ってしまう。このまま生きていくのが怖くて混乱している。

その気持ちを浄化して落ち着かせてくれるのは、私の推し俳優の彼である。彼の顔を拝めば、恐怖が吹き飛ぶ。8月末には映画も公開される。ここ最近の彼の目覚しい活躍は、本当に幸せなひと時だ。

推し俳優の彼のためにも、ワクチンに負けていられない。