次女結婚への「おめでとう」には「ありがとう」の不純物が混じっている

私は三姉妹の長女である。
長女28歳、次女26歳、三女20歳の編成である。
三姉妹といえど、似ているところはほんの僅か。
見た目も好みも全然違う。
“多種多様”がしっくりくるくらい、私たち三姉妹は似ていない。
今年の夏、次女が結婚した。
おめでたいことだ。
この喜ばしい報告を受け、私は何故か解放感に満ち溢れた。
この歳になると、 周囲から全く同じことを聞かれる。
「結婚はしないの?」
「子供は生まないの?」
そんな矢先の次女の結婚。
私にとって色んな意味で喜ばしいことになったのだ。
「次女が結婚したということは、聞かれても回避する回答ルートができたのか……!」
「妹が結婚したので、急いで結婚しなくても……とか言っても平気だ!」
そう考えた私は身も心も軽くなったのだ。
実家に帰った時、三女にこっそりそのことを伝えると、 「え……ヤバい奴じゃん……」とドン引きされた。
いや、うん……それが世間一般の正しい反応だと思うよ。
私は苦笑いしてその場を凌ぐしかなかった。
ここまで書いていて思うのは、 私の次女に対する「おめでとう」には「(言い訳の材料をくれて)ありがとう」が含まれていて、 純粋な「おめでとう」ではなく、不純物が混ざってしまっているということだ。
ああ、なんて最低な姉なんだろう。酷い姉なんだろう。
純粋に「おめでとう」を言ってあげられないなんて。
そう自己嫌悪に陥りながらも真顔でキーボードを叩いているあたり、 私はやっぱり残念な姉なんだな、と自分で思うのだ。
そんな罪悪感もあってか、結婚祝いは欲しいものをあげようと思った。
身内への結婚祝いなんて、自分の人生に発生するイベントだと思っていなかったから、 何を贈ったらいいのか分からない、っていうのもあったんだけど(まあ、この裏の理由はばれないようにそっと心の中にしまっておこう)。
結局、次女のリクエストを受け、ダイソンのドライヤーを贈ることになった。
ついさっき、ドライヤーありがとうのLINE電話が来た。
三姉妹揃って話すのは久々で、話すというよりは沈黙が続き、笑うの繰り返しだったけど。
次女の純粋な「ありがとう、凄く嬉しかった」は、不純物まみれの私をバッサバッサと斬りかかりに来る。
HP、MPがわずかになっている私は「どういたしまして」と言うのが精一杯だった。
電話越しに次女の旦那さんが「直接会うことを考えると緊張する」と言っていた。
いやいや、こんな大したことない私に緊張なんて申し訳ない。
緊張していただけるなんておこがましいぞ、私。
コロナ禍で挨拶できてなかったんだよな、と思いつつ、私は少し焦った。
もしかしたら彼は私の本性を見抜いているのかもしれない、と。
「(不純物だらけの義姉に)直接会うことを考えると(恐ろしくて)緊張する」だったらどうしよう。
私は一人で頭を抱えたのである。
会うときにぼろを出しませんように、と願いながら、この不純物だらけの文章を浄化することにする。
次女、結婚おめでとう。
ただただ純粋に喜んでいます。
あなたが幸せになれて良かった。
お酒好きを知ってか知らずか、結婚祝いのお返しに梅酒をチョイスしてくれてありがとう。
大事に飲みます。
旦那さんには、緊張するような相手ではないこと、大した奴ではないことを教え込んでください。
コロナが落ち着いたら、お寿司を食べに行こうね。
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