学校の先生、友達、職場の人、親戚、家族ぐるみで昔からお世話になったあの人もこの人も、誰も気付いてはくれなかったけれど、うちは機能不全家族だった。
小さいときは、アニメやアクション映画の喧嘩と見分けがつかず、それが普通だと思っていたけれど、両親が私の目の前で罵声を浴びせあうことは日常茶飯事で、父は度々母を殴り、家の中の物を壊した。
矛先がこっちへ向くことを恐れて、とにかく怒り出したら部屋の隅でじっとし続けた。

小学生になって、妹が生まれてからは、守ってあげなきゃと思ったし、中学高校のころには二人で逃げ出したいと何度も考えたけれど、できなかった。
両親は本来、育ちが良くて子供好きで、嫌なことばかりではなかった。「いい家族だね」と言われることも少なくなかった。
私も両親から居場所を奪いたくなかったし、自分から家族を諦めたくなかった。だから、誰も気付いてはくれなかった。

実家を出て、「毎日自分の家に帰る」というそれだけのことが、こんなにもほっとするのなら、もっと早く無理をしてでも家を出ればよかったと思った。
今はもう助けを求める必要はなくなったけれど、ただ、誰かに話したい。