真夜中の3時30分。静まり返った住宅街。私だけやる気に満ち溢れている

真夜中3:30。
私はベッドから起き上がる。何か用事がある訳でもないのに、毎日この時間に目が覚める。
頭はスッキリ、視界もクリアだ。ボリボリと腹を掻きながらリビングへ向かう。
静まり返った住宅街で、私だけがやる気に満ち溢れているこの感じが好きだ。

「よし」
radikoで好きな芸人のラジオを流し、何日前の物か分からない食器をへらへらと笑いながら洗う。
おいそぎモードで洗濯を回し、せかせかとベランダへ干しに行く。友達の植物達に水を与え、少し会話をする。

全てが終わる頃には外は明るくなり、まだ早朝だというのに太陽がジリジリとうるさい。
外出なんてしないのに、「今日も暑いんだろうなぁー、しんど」。太陽に文句を吐きカーテンを閉め、エアコンの温度を下げる。

今日の朝ご飯はフランスパンにマスカルポーネと生ハムを挟んだ物を齧る。幸せだ。
食欲が満たされると歯を磨き、ベッドに戻りスマホゲームをしているうちに寝落ちる。
起きると時間は、真夜中3:30。

一度しかない29歳の夏。最後に夏を楽しんだのは何年前だろう

毎日この繰り返し。
29歳の夏。
一度しかない、29歳の夏。

たまにふとベッドの中で思う。
最後に夏を楽しんだのは何年前だろう。
友達と食べ物を持ち寄り、わいわいとバーベキューをした夏があった。
とても充実した夏だった、と思う。

しかしその記憶を思い出そうとすると、映像にキラキラしたフィルターがかかっていて、それが鬱陶しいのか、私の思い出映画館は営業を辞めてしまう。
LINEグループに当時の写真などが残っているが、それも胸に強烈な痛みが走るため、ドクターストップで閲覧出来ない。

引きこもり無職は思い出に浸ることすら出来ないのだ。

明日は何をして、何を食べよう。今の29歳の夏は過去の私が作った

今の29歳の夏を作ったのは自分なのに、何故か過去の何年か前の夏を作った自分に嫉妬している。
あほらしい。

いつかまたキラキラした生活が帰ってきますか?
私は外に出て人間の暮らしをして、誰かとニコニコ笑っていますか?

真っ暗なスマホの画面に映る私の顔。
「しんど、寝よ」
長い爪で頭をガリガリ掻いて、寝るポジションを整え目を閉じる。

寝ている時間が一番幸せ。
明日は何をしよう、何を食べようかな。
おやすみ。