夏と言えば、お祭りやイベント。
楽しいことがたくさん待っている、そんなイメージではないだろうか。
しかし去年から新型コロナウイルスの影響で、基本的にはずっと自粛ムードが広がっている。
緊急事態宣言、まん延防止等重点措置やイベント中止の文字、飲食店の時短営業などなど……。
誰もが、いつ自分が感染するか分からない恐怖、目に見えないウイルスと日々戦いながら過ごしているのではないだろうか。
言い方は悪いが、今年はそんなコロナと共に過ごす2度目の夏を迎えている。

自粛ムードで、代り映えのない日々を過ごした一度目の夏

昨年はコロナが流行して最初の夏だった。
4月に発出された全国的な緊急事態宣言下では一度も出勤することなく、リモートワーク。
家で仕事ができてしまうことに対する驚きと、出勤時間を家のことにあてられる有難さ。
「リモートワーク最高!」なんて思ったのは本当に最初だけだった。
緊急事態宣言が解除されても、リモートワークは続いた。夏には月に1、2回の出勤があったが、それでもコロナに感染しないよう、仕事終わりはまっすぐ家に帰った。
コロナ前は仕事終わりに友人と外食も頻繁にしていたが、それすらもできない。
それに加えて、もともと国内・海外問わず旅行が好きで、ピーク時は月に1回のペースで旅行をしていた私にとって、外出することができないこの状況は苦でしかなかった。
仕事にも悩み、コロナで毎日もやもや。
様々な感情が私の中であふれ出し、最終的に出した結論は、何もかも変えることだった。

移住し、住む場所そのものに求めていた大自然が広がる二度目の夏

環境を変えたいと考えた私は、東京からコロナ感染者が少ない地方へ移住した。
地方といえども、私が住む場所は比較的町中だ。テレビなどでよく放送されている「ザ・田舎!」のような場所ではないので、生活する上で不便のことは全くない。
スーパー、コンビニ、病院、薬局など基本的に徒歩圏内で揃っている。
移住者にとって、そこまでハードルが高くない場所と言っていい。

しかし、少し車を走らせれば、町中にはない大自然が広がっている。
今、改めて思い返せば、私は大自然を求めて、SNSで検索をし、気になったところへよく旅行をしていた。
今は住む場所そのものに、私の求めていた大自然がある。
更には、これまで旅先でしか行ったことのなかった道の駅が、市内にいくつもある。
農家さんが手間暇かけてこだわって作った美味しくて新鮮な野菜がすぐ手に入るのだ。

綺麗な空気、大自然、そしてこだわった美味しい野菜たち。
全国的に有名なチェーン店や遊ぶような場所はあまりない。
だけど私が求めていたものはこれだった。

コロナに感謝しているわけではないけど、私の人生を大きく変えた

コロナが流行しなければ、きっと私は人があふれかえっている東京にずっといた。
慣れ親しんだ東京を離れることなんて絶対になかっただろうし、離れる理由がそもそもない。
コロナは私の人生を大きく変えた。
「何もないけど、それがいい」ということに気付かせてくれた。
コロナに感謝しているわけではないけど、ずっと疲弊していた私の心も、地方へ移住してからはびっくりするくらい穏やかだ。
毎日が新鮮で、仕事もプライベートも楽しい。

相変わらずのコロナ禍で、最近は感染者も増えている。
もちろん気にしないで生活するというわけではないけど、去年の夏の東京での暮らしを考えれば楽しい毎日を過ごしている。
去年の今ごろは、こんな生活をしているとは思ってもみなかったし、変わろうと一念発起したからこそ、出会えた場所だ。

今年の夏。
それは、コロナも夏の暑さも忘れるくらい、暮らしそのものが旅のようで、まさに私が求めていた世界。
何もないけど、それが心地よいのだ。