私は今年の1月。23年間で最大の人生のドッキリに遭遇した。それは、到底一人では抱えきれない問題だった。

社会人になって半年。教師として日々忙しく初任研や授業に向き合っていた。そんな時、ふとある生徒を知るために自己研鑽も兼ねて個人でzoomの発達障害の勉強会に参加した。それは、「ADHD」をテーマとしたものだった。
最初は、「彼(生徒)にもそういう特性があるよね……」程度に聞いていた。しかし、説明が進むにつれ、「発達障害には睡眠障害が併発する場合が多い」「報酬系機能低下に伴い、例えばお菓子を我慢できずに一袋開けてしまう」などの内容が発表された。
「……あれ……もしかして……」
聞けば聞くほど私に当てはまる内容を説明されたのだ。

なんとなく感じていた「人との違い」。思い出してみると結構あった

私はかつて、高校生の時初めてYouTubeでADHDについて知った時、数学の先生に「私ってADHDですかね?」と聞いたことがあった。しかし、「本当にそうなら、もっと困っているはずよ。あなたは大丈夫」と返答された。

それ以来、私が片付けができなかったり、テストでケアレスミスが多いのはADHDではないのかなと受け流していた。
しかし、大学生の時一人暮らしを始めて、なんとなく人と違うなと感じることが幾つかあった。

例えば6畳の部屋にうまく服や物を収めることができない。いつも散らかりっぱなし。片付けてもすぐ散らかる。挙げ句の果てに片付ける途中で次の場所に目移りして別の片付けを始め、片付けが終わらない永遠ループ。

大学の講義では1回も寝たいと思ったことはないのに、空想しているうちに眠りについてしまう。睡眠は足りてるはずなのに。ある時はあまりの睡魔にトイレで空きコマを過ごしたこともあった。誰よりもいい成績とりたくて全力で授業を受けたいのに。
いつの間にか「カフェラテちゃんって良く寝るよね」といわれるようになった。

ただ、唯一模擬授業の授業に向けては自分の中でも楽しく頑張ることができた。
深夜2時くらいに急に授業を閃き、キッチンに立ったこともある。ある時は実験室にこもり、模擬授業の練習を深夜2時まで一人行ったことがある。

勇気を出して診療内科へ。検査の結果待ち、心の中の自分が対立した

これだけ安心できるまで練習を重ねても早口だと言われて落ち込むことがあったが、何故変な時間に行動に移したくなったり、自分が潰れるまで追い詰めることができるのか自分でも正直分からなかった。
こうして無事教員採用試験は無事突破したものの、社会人としてもたくさんの壁を感じるようになった。そこで、たまたま見つけたオンライン勉強会で自身のADHDを疑い始め、勇気を出して心療内科に行くことにした。

正直、発達検査を受け、結果が出るまでは「クロになりたい自分」と「シロでいたい自分」が対立してこれまでにないほど病んだ。「グレーゾーンだったら嫌だな……」と思うと、ベッドから動けなくなった。悩んでいるうちに、

「勝負でもそうだけど世の中はクロとシロで判断したがる。だから混ぜてもハイイロにしかならない。なんで世の中白黒で判断したがるんだろう。例えば、緑と赤で、黄色とか青と赤で、ピンク(マゼンタ)とか、そっちの表し方の方が絶対世の中面白くなるろうに」
こんな考えが浮かんだ。
仮にもし私がグレーゾーンだとしても、マゼンタだったらまだ心が耐えられるなと思うことができた。

そして1月24日。「あなたはADHDの特性を持っています。グレーゾーンの位置にはいます」と診断された。

自分をマゼンタだと思い「フツウ」で生きていく決意をしたけど…

もし、あの時の悟りがなかったら、23年間で最大の人生のドッキリを受け止められなかっただろう。この時から私は自分をマゼンタだと思うことにした。
実家や同僚にこの事実を話さず、これまで通りフツウで生きていく決意をした。そして、
「(A)アホで
 (D)ダメダメでも
 (H)ひっしに
 (D)努力します」
と自分に言い聞かせるようにした。

とはいうものの、私たちにとって一番辛いのは、自分の特性が生活に支障をきたすと痛感した時である。
仕事でも幾度かADHDを想起させるミスをしても、同僚に事実を言えず診断前も含めて今年で計3回軽い鬱になった。
いっそのことクロになりたい。転職すべきだろうか……と何度思ったことか……。

3度目の鬱の波が回復した頃、ナビにつられて山道を通ることがあった。
岩肌に生えたコケ。自然が織りなす光景にひさびさにテンションが上がった。車通りのない山道に車を止めて、教材探しがてら車を止めてコケ探しをする。
私のマゼンタ、今日はやたら元気だなと思いつつも、人気のないことを良いことにひさびさに一人はしゃいだ。

その後ナビの案内を行き違え、Uターンすると教科書の写真にある見覚えのある緑が見えた。慌ててまた車を止めてその緑を眺める。
「……ゼニじゃん!ゼニゴケじゃん!!」
思わずガッツポーズしてバケツを取りにトランクに走る。
私にとってゼニゴケはこれまでずっと探しても出会えなかったレア種。これまでにない喜びを感じた。

振り返ってみると、マゼンタの自分がいたから…と思える瞬間があった

この時私は気付いた。もし私がフツウの人間だったらあそこでゼニゴケの姿に気付かなかったし、気付いても車を止めて確認しに行かなかっただろう。私のマゼンタもたまにはやるなと思った。
思えば、大学の時模擬授業にあれだけ頑張れたのもマゼンタ(衝動性)のおかげだ。
今までI can'tの自分を責めて鬱になってを繰り返してきたけれど、初めて私の中で見つけたI canの部分だ。そう思うとなんだか私のマゼンタを誇らしく思えた。
時にはADHDの日も悪くない。フツウじゃないからこそできることもたくさんある。

「(A)アホで
 (D)ダメダメだけど
 (H)フツウじゃできないことも
 (D)できます!」
こんな私のマゼンタ、かっこいいだろ?私のマゼンタは唯一無二の私だけの色だもの。
これからはマゼンタとして絶対的な自信を持って生きていく。たとえ不器用だとしても。