特集:忘れられない匂い

甘くて残酷なこの匂いの呪いに、あなたもかかっていればいい

忘れられない匂い

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あなたは日本語が読めないから、5、6年経っても消え失せないこの呪いをここに明かそうかしら。
匂いというのは本当に恐ろしいもので、何年経っても一瞬で薄れていた記憶が全てが蘇る。
思い出したいかどうかという私の思いは加味されない。
街中であなたと同じ香水をつけている誰かとすれ違う度に、留学中に一目惚れしたあなたを思い出す。
会うたびにいい匂いがするあなたに出会って、私は香水に少しだけ詳しくなった。

あなたが吹きかけた香水は、離れていてもあの甘い瞬間に引き戻す

私の恋は大体片思い。遠くで見ていることが多い人生だったのに、好きな人とこんなに親友みたいに仲良くなるのは初めてで、会った時、帰る時、一日最低2回は無条件でハグできる外国の文化にどれだけ感謝したことか。
ハグしてもらう度に香水のいい匂いが香って、その度に幸せな気持ちで心がいっぱいになった。

あなたは覚えているだろうか。
留学中の大晦日、お互いに予定があって一緒に過ごせなかったあの日のことを。
私が少し落ち込んでいることを察したのか、あなたは突然私の手を取って、あなたの香水を私の腕に吹きかけた。
「友達と過ごしてても、ちゃんと僕のこと考えてよね」
照れている素振りは見せず、当たり前かのようにあなたは言い放った。
甘ったる……!!! 外国男子の威力たるや。
平静を装う一方で、心で大絶叫。
少女漫画に似た感覚のあの甘い世界。
あなたの思惑は成功し、友達と過ごしていても、あなたの匂いがする度にあの少しだけ甘い瞬間に引き戻された。

片思いには慣れていたはずなのに、まだ立ち直れていないのかも

その後、私はあなたに想いを告げたけど、あなたは初恋が忘れられないとか、遠距離恋愛に自信が持てないとかで、私の帰国と共に疎遠になった。
結局、この恋もただの片思いだった。いつも通り。
片思いには慣れてたはずなのに、私は2年くらい立ち直れなかった。
この文章で恨みつらみを綴っている時点で、大変悔しいことながら、私はまだ立ち直れていないのかもしれない。
何を見てもあなたを思い出して、あの香水をつけた人とすれ違う度に強制的にあなたを思い出すこの呪い。
その後もなぜかあなたは私と連絡をとりたがって、年に何回か、誕生日にお祝いを送りあうだけの関係にはなりたくないと言われたけど、あなたも諦めたのか、かつて親友だった私達は誕生日だけ祝いあう関係になってしまった。

甘くて残酷なこの匂いの呪いに、あなたもかかっていればいい

私はたまに思い出す。
私をハグしてくれた時に「いい匂いがする」と言って、ぎゅっとハグをしてくれた時のことを。
その時は留学先の国の洗剤を使っていたので、もう私はあの匂いを纏ってはいない。
でもたまに思う。
あなたもその洗剤を使っている誰かと異国ですれ違う度に、私と過ごしたあの日々を思い出せばいい。
二人でマックでご飯を食べて、お互いの言葉の揚げ足をとって、お腹が痛くなるほど笑い合い、深夜まで映画を二人で見漁って、隣人が壁を叩くほどの大音量でみんなで歌って踊り明かした夜。
私がドアを開けて、初めてあなたに出会ったあの瞬間まで遡って、あいつはどうしているんだろうかと脳裏に過ればいい。
あなたも私と同じく、甘くて残酷なこの匂いの呪いにかかっていればいい。

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