かがみよかがみでは、「あの人に謝りたいこと」をテーマにエッセイを募集しました。たくさんのご応募の中から、編集部が一番心に響いたエッセイを「かがみすと賞」として選ばせていただきました。

今回は、かがみすと賞1本、編集部選として2本のエッセイをご紹介いたします。

◆かがみすと賞

サンタさんに捨てさせてしまったプレゼント。傷つけてしまってごめんなさい(てん)

サンタさんから贈られたプレゼントが希望のものと違い、あまり使わずにいたという、てんさん。数年後の大掃除で、母親がそれらを捨てた姿を見て、今でも悔やんでいるといいます。

月日が経ち私は成人した。お金を稼ぐことも経験した。そしてあの頃薄々感じていたけれども、母はカツカツのお財布事情の中、私の趣味嗜好や性格を考えて、プレゼントを選んでくれていたことを薄々ではなくはっきりと分かった。

お母さんからの愛情が伝わる描写や、当時の心境が丁寧に綴られており、切なさに読んでいて胸がぎゅっと締め付けられました。

ずっと謝りたいと思っていたけれど、面と向かっては謝れない天邪鬼。だから私の文章を褒めてくれる母に、文章で伝えたい。 私専属のサンタさん、ずっとずっとありがとう。プレゼント大切にできなくて、気持ちを傷つけてしまってごめんなさい。

お母さんへの感謝の気持ちを、得意の文章で伝えたいとエッセイを投稿してくださったてんさん。心がじんわり温かくなる、素敵なエッセイでした。

◆編集部選
余命わずかの祖父か、仕事か。迷うことができなかった私は、最後まで身勝手な孫だった(ちゃこ)

おじいさんの余命わずかと伝えられた数日後に、仕事で1か月家から離れる予定があったという、ちゃこさん。迷うことなく仕事を選んだものの、その後の葛藤や心境が丁寧に綴られたエッセイです。

今回の私の全国を巡る旅やそこで得た経験は、祖父が私に会わないまま亡くなったという事実と、それにまつわる様々な葛藤によって靄に包まれ、記憶から取り出すことが難しくなってしまった。

正しい答えのない決断を迫られ、その悩みや葛藤はいかほどだったかと、想像するだけで胸が締め付けられそうでした。読みやすく、かつ具体的な心情や情景描写のある筆致で、心を強くゆさぶられたエッセイでした。

「こんな母親になりたくなかった。ごめんなさい」。涙をこぼす母の人生を思った(佐藤由黄)

反抗期真っ只中の高校生のころ、母親を傷つけてしまったという佐藤由黄さん。お母さんは怒りと悲しさのあまり、佐藤さんの携帯を折るほどだったといいます。臨場感のある文章に、当時の緊張感や、感情が高ぶる瞬間、その後の気まずさといたたまれない空気がひしひしと伝わってきました。その後、この出来事を振り返った佐藤さんの文章にも、はっとさせられました。

母がわたしの携帯を折ってくれて良かった。 彼女の心がひび割れて、何も映さなくなる前に、自分自身を守ってくれて良かった。 また、母はわたしを、母が壊れるきっかけをつくる罪からも守ってくれたのだ。 とことん大きな、強い人だ。

やさしさゆえに、辛いことやストレスに耐え、結果的に心を壊してしまうこと、きっと多いですよね。
近い関係だからこそ、気持ちを伝え合う大切さを教えてくれるエッセイでした。

以上、「あの人に謝りたいこと」のかがみすと賞、編集部選の発表でした!たくさんの素敵なご投稿を、本当にありがとうございました。現在募集中のテーマはこちらから。みなさまからのご投稿、お待ちしております!

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