かがみよかがみ編集部では、「私のたからもの」をテーマにエッセイを募集しました。たくさんのご応募の中から、編集部が一番心に響いたエッセイを「かがみすと賞」として選ばせていただきました。
今回は、かがみすと賞1本、編集部選として2本のエッセイをご紹介いたします。
◆かがみすと賞
その頑張る背中が誰かの記憶に残り、誰かの心を救うかもしれない(ふみえ)
大好きなサッカー選手が、ある試合で決めた一点は、いわゆる世間の「歴史的瞬間」ではないのかもしれない。それでも今の自分を確かに形作っている宝物だとふみえさんは綴ります。
心情を丁寧に綴っているのはもちろん、高校時代の部活での葛藤、サッカー選手の客観的な事柄など、様々な要素を絡ませながらひとつのエッセイにとても上手にまとめていると感じました。ドラマを見ているような読後感。胸を打たれるエッセイでした。
◆編集部選
生きていくことは、私のフォルダに「宝物」を入れていくこと(武中ゆいか)
抽象的になりがちな「生きること」をテーマにしながらも、丁寧にかつ具体的にその言葉の内を綴ってくださっていたのが印象的なエッセイでした。今回の投稿にあたり自分にとっての「宝物」をおそらく何度も考えてくださったのでしょう。エッセイ後半に登場する武中さんの宝物たちは、日常と地続きでありながら輝いていて、読み手の私たちも毎日をもっと大切にしたくなるような温かな気持ちになるものでした。
生きていくことは、宝物という言葉で表すような大切なものを積み重ねていけることだから。
そして生きていることは、数えきれないほどの大切な事柄をいつでも思い出し、慈しむことができることだから。
やさしく穏やかな文体で、生きるのがしんどくなってしまったとき、そっと読み返したくなるようなエッセイでした。
◆母が買ってきた105円のシャーペン。それは私の努力の証で、母の愛だ(あてん)
シャープペンシルにまつわる思い出を、中学生のころから振り返っていくあてんさんのエッセイ。時系列に思い出を綴りながらも、シンプルかつ飽きさせない言葉選びに一気に惹きこまれました。
今、仕事ではいつも胸ポケットにエメラルドグリーンのシャープペンシルを忍ばせている。諦めそうになるたびに、挫けそうになるたびに、見つめるたびに、今まで乗り越えてきた人生の試練を、そして母が買ってきてくれた思い出が蘇る。
たくさんの困難を乗り越えてきた自分への信頼と、お母さんの愛情がこもったシャープペンシル。胸がじんわりと熱くなるエッセイでした。
以上、「私のたからもの」のかがみすと賞、編集部選の発表でした!たくさんの素敵なご投稿を、本当にありがとうございました。現在募集中のテーマはこちらから。みなさまからのご投稿、お待ちしております!