私は今でも毎年クリスマスが近づくと心のどこかが疼く。
枕元のクリスマスプレゼントをめぐって、私には忘れられない2つのプレゼントと忘れられない2つの出来事がある。
義務教育が終わるまでの約15年間、私専属のサンタさんが居た。
ただ、そのサンタさんはお財布の持ち合わせが少なかった。
だからクリスマスの朝、枕元に置いてあったのは私の全く知らない物で、サンタさんにお願いしていない物ばかりだった。

クリスマスに届く枕元のプレゼント。サンタさんに届かなかった願い

私が小学校中学年くらいの年のクリスマスに、今でも忘れられない出来事が起こった。
枕元に置かれていたのは全く興味が惹かれないおもちゃだった。
そのおもちゃが嫌で嫌で、年末年始の祖父母宅へ行った時も駄々を捏ねていた。
祖父母宅へ行ったその日、「サンタさんが間違えたから届けに来てくれたよ」と私が欲しかったおもちゃがプレゼントされた。
でも、私は知ってる。そのプレゼントされた欲しかったおもちゃは、事情を知った叔父や祖父らが買ってくれたものであることを。
きっと困り果てた私専属のサンタさんである母が、叔父や祖父らに事情を話したのだろう。
私は嬉しかったが、それに気づいて罪悪感を抱いた。
罪悪感から、なるべく母がプレゼントしてくれたそのおもちゃで遊んでみることを心がけた。心がけたが興味が持てず楽しめなかった。なので持続せず、次第にガラクタ扱いになった。

また別の年のクリスマス、多分私は小学5年生くらいだったと思う。今度は手袋が枕元に置かれていた。
どれだけ考えてもあまりピンとくる理由が見つからなかった。
そして、私はその手袋の触り心地、手袋を触った時に聞こえる音が不快になるくらい苦手だった。その結果、私がその手袋を手にしたのは片手で数えられる程度となってしまった。母は私のプレゼントに対する温度が微妙だと悟っていた。それを私は察知した。余計に申し訳なさが増し、手袋の話題も避けるようになった。
その年を境に、クリスマスプレゼントは枕元に置かれるのではなく、私が店舗へ一緒に行って買ってもらうようになった。

サンタさんに捨てさせてしまったプレゼント。傷つけてしまってごめんなさい

数年後に自宅を大掃除することになった時、母が「どうせ使わないなら捨てよう」と言い、手袋とガラクタ扱いとなったあのおもちゃをゴミ袋の底に埋めてしまった。
買ってくれた母にゴミ袋の中へプレゼントを捨てさせることは、母が傷つくことだからどうしても私が回避したかった事だった。だから頑張っておもちゃを楽しんだり、手にしたりしてた。けど、結果的に母に捨てさせてしまった。あの時の私にはどうしようもできなかったけど、今でも悔やんでいる。

あなたが褒めてくれる文章で伝える。私専属のサンタさんへの感謝の気持ち

月日が経ち私は成人した。お金を稼ぐことも経験した。そしてあの頃薄々感じていたけれども、母はカツカツのお財布事情の中、私の趣味嗜好や性格を考えて、プレゼントを選んでくれていたことを薄々ではなくはっきりと分かった。
私専属のサンタさんは、ずっと頑張ってくれていた。それは枕元のプレゼントだけじゃない。サンタからの手紙が届くというサービスを利用して、私宛のサンタからの手紙をプレゼントしてくれたこともある。サンタさんとトナカイさんにお礼をするんだと律儀にケーキを1人分残し、にんじんを買うことをせがんだ私に付き合ってくれたこともある。クリスマスに雪が積もって家の前に何かが通った形跡ができた時、目覚めの悪い私に「サンタさんが来たソリの跡あるから見ておいで!」と上手く起こしてくれたこともある。
私はその専属のサンタさんの頑張りや気持ちに子供ながらに薄々気づいていた。
けれど子供だった私はサンタさんより自分の気持ちを優先してしまって、サンタさんを困らせて傷つけてしまった。
ずっと謝りたいと思っていたけれど、面と向かっては謝れない天邪鬼。
だから私の文章を褒めてくれる母に、文章で伝えたい。

私専属のサンタさん、ずっとずっとありがとう。プレゼント大切にできなくて、気持ちを傷つけてしまってごめんなさい。
でもサンタさんがくれたプレゼントやケーキ、楽しみがあったから、私は今でもクリスマスが大好きでいられるよ。ありがとう。