ふとした時に、未来の自分に向けて手紙を書くことがある。なぜ未来の自分にあてて手紙を書こうと思ったのか、という経緯は全く覚えていないが、最初の手紙を読み返してみると非常に悩んでいたことが伺えた。
最初の手紙は15歳になる年の14歳の自分。その頃の悩みはもっぱら将来への不安だった。

アイドルが夢だった私。夢破れた絶望と、その後の葛藤の日々

当時の私はアイドルという世界に憧れを持ち、実際に当時とても人気のあった国民的女性アイドルグループの姉妹グループの最終オーディションに合格。晴れて夢実現!というようにはならず、最終オーディションの後にセレクション審査というレッスンが待ち構えていた。

平日は学校、土日はレッスンという期間が1ヶ月ほどあり、受かるか落ちるかという変なプレッシャーや一緒に受けている子たちに対して一緒に頑張ろうと思う仲間のような気持ちと共に私は受かりたい、人よりダンスが上手いと思われたい、しっかりしていると思われたい。そんな思いが強かった。

そんな中で、最終的に自分の番号を呼ばれなかった絶望。
アイドルしか夢がなく、これから何をしたらいいのか。応援してくれていた家族の、悲しんでいるけど無理に笑っていることが明らかにわかる表情。仲間だった子たちが受かってデビューする姿。見ないように現実から目を逸らして、気づいたら涙が出ているあの時の自分。

受験生という年になり、志望校を決める時も自分はアイドルになりたいのにと思う自分と、いいかげん夢を見すぎるな、普通に勉強して普通の学校にいって普通の人になろう、普通に企業で働いて普通に一般的な人になろうと、普通という言葉にこだわっていた自分の葛藤がずっとあった。

高校で経験した初めてのいじめ。自分に向けて書いた手紙

結局芸能コースがある高校と一般的な女子高どちらも受かり、一般的な女子校を選び進学した。進学した女子校は私立で家から遠かったこともあり、中学時代の友達はほぼいなかった。
1から自分を見つめ直そうと積極的に声をかけ仲良くなったグループで、私は初めていじめにあった。
いじめというあからさまなものではなく無視からはじまり、影で自分の悪口を言っている声が聞こえ、急に遊びに誘われた事があったが、時間と場所を教えてもらえず何とか連絡を取れたと思ったらずっと完全無視だった。
遊びに誘われた時も何となくわかっていたが、行かなかったら話についていけなくなるのではないか、もしかしたら今まで私の思いすごしで本当はみんな私と仲良くしたいのではないかと無理して行っただけに、帰りの電車では号泣した。

その時もこんな高校に来る意味なんてなかったと後悔して手紙を書いた。
生きる意味はあるのか、セレクションで落ちた時に死んでおけばよかったのか。そんな事で頭がいっぱいだった。
そして、素敵な大人になれるのか、自分が納得する自分になれるのか。私は未来で笑えているのか。そんなことばかり書いた。

苦しい経験もしたけど今の自分が好き。自慢できる私でいよう

苦しかった。ずっと苦しかった。
だから未来、自分が生きているといいことがあるのか。それを目指して今私は頑張って生きていこう。そんな気持ちで書いたのだと思う。たくさん手紙を書いた。

地獄のような高校生活は2年生になってクラスが変わった時に終わり、2年生からは目立たず大人しく卒業まで過ごした。本だけが友達だった。その後は短大に進学し、社会人3年目になる。

手紙のことなど忘れていたが、引き出しを開けると未来の私へと書いたたくさんの手紙が出てくる。
未来の私とはいつを指しているのかわからないが、その頃からしたら今も未来の私なのだ。

アイドルしか夢がなかった私は、高校での経験を通して本が好きになり、図書館で働くようになった。
あの時もし受かっていたらといまだに考えることもあるが、今の自分は結構好きだったりする。
セレクションで落ちた経験があるから絶望を知り、高校での経験があるから人の痛みもわかる。本が友達だったから今の仕事をしている。資格をとるためだけに進学した短大では、心から信頼出来るたくさんの友人と出会った。

好きな仕事をして、好きな服を着て、着飾って美味しいご飯を食べている今の自分が好き。手紙は自分だけの過去で自分だけの記録。その頃の自分が思い描いていた自分にこれからもなれるよう、自慢できる自分でいようとおもう。